top of page

さいたま市・高台の庭園整備。12mの杉と強風に挑んだ、職人2人の判断と仕事

  • 執筆者の写真: いつきスタッフ
    いつきスタッフ
  • 2 日前
  • 読了時間: 7分

①作業前

2026年4月7日。埼玉県さいたま市の閑静な住宅街。今日、我々「株式会社 樹」が訪れたのは、見晴らしの良い高台に位置する個人宅だ。施主様からは「いつの間にか木が大きくなってしまい、自分たちでは手が付けられなくなった」との切実なご相談をいただき、2人の職人で現場に乗り込んだ。

現場に到着してまず目に入ったのは、天を突くように伸びた10mの雑木と、さらにその上を行く12mの杉だ。特に高台という立地条件もあり、木々は地上で見る以上の威圧感を持ってそびえ立っている。杉の枝は住宅の屋根に迫り、このままでは建物への影響も避けられない。さらに、その足元には大切に育てられているミカンの木が一際鮮やかな緑を湛えている。

今日のミッションは、10mの雑木の伐採と、杉の12m地点にある枝の除去、そしてミカンの木の剪定だ。2トンダンプを据え、チェーンソー2台の燃料をチェックする。高所作業に備え、登攀(とうはん)道具一式をハーネスに装着する指先にも力が入る。くもり空の下、空気はどこか重く、高台特有の風が時折枝葉を大きく揺らしていた。

「音出しは8時を過ぎてから。まずは杉の枝の安全確保から始めましょう」。近隣へのマナーを再確認し、施主様と今日の工程を共有する。この時点ではまだ、午後に待ち構える「想定外の強風」がこれほどまでの猛威を振るうとは、誰も予想していなかった。高台の空を再び施主様に取り戻すための、静かな、しかし確かな闘いが幕を開けた。





②枝落とし作業

8時を過ぎ、周囲の住宅街が活動を始めるタイミングを見計らい、我々は行動を開始した。本日の最優先事項は、住宅の屋根に覆いかぶさるように伸びた杉の枝落としだ。樹高12m。その高所へ登攀(とうはん)道具一式をハーネスに装着し、一本のメインロープを頼りに、私はゆっくりと、しかし確実に杉の幹へと登り始めた。

高台という立地もあり、数メートル登るだけで、視界は地上とは一変する。足元には施主様の屋根が広がり、その向こうにはさいたま市の街並みが一望できる。しかし、絶景を楽しんでいる余裕はない。私の体は安全帯で木に固定されているが、切り落とすべき枝は、屋根や電線に対して非常に際どい位置に風で揺れている。

ここで重宝するのが、小型で取り回しの良いチェーンソーだ。片手で扱える機動力を活かし、電線に接触しそうな細枝を一本ずつ、繊細なタッチで捌(さば)いていく。そして、屋根の真上に位置する太い枝に対しては、ただ切り落とすのではなく、ロープを用いて地上で待機する相棒と呼吸を合わせながら「吊(つ)り降ろし」ていく。切り離された枝が重力に逆らうように静かに降ろされていくこの瞬間、現場には心地よい緊張感が走る。

住宅地のど真ん中、そして高台。風の通り道となるこの場所で、一分の狂いも許されない空中の境界線。電線への接触はゼロ。落とす枝の方向はミリ単位で管理。相棒との信頼関係が、この難易度の高い高所作業を安全な「手仕事」へと変えていく。見上げた空に、少しずつ、施主様が望んでいた「光と風の道」が切り拓かれていった。




③小切り作業

杉の巨木から吊り降ろされた枝葉、そして伐採された10mの雑木が、次々と地上の作業スペースへと積み重なっていく。ここで重要なのが、次工程の積み込みを円滑に進めるための「小切り(こぎり)作業」だ。どれほど見事に枝を落としても、そのままでは2トンダンプの荷台に収めることはできない。

地上では、もう一台のチェーンソーが小気味よい音を立てて始動する。高台という限られた庭のスペースを有効に使うため、降ろされたばかりの枝を、積み込みに最適な長さに切り揃えていく。特に杉の枝は、主幹から四方に広がるため、そのままでは嵩(かさ)張って積載効率を著しく下げてしまう。枝の分岐点を見極め、一瞬でバラバラに解体していくその手並みは、まさに職人の「整理整頓」そのものだ。

今回の現場では、高所作業をしている間に地上での小切りを完璧に終わらせることで、現場に「ゴミの山」を作らないよう配慮した。また、切断する際には、施主様が大切にされているミカンの木や他の植栽におが屑が極力かからないよう、チェーンソーを振る方向にも細心の注意を払う。

さらに、小切りをしながら材の選別も同時に行う。ダンプの底に敷くべき太い幹、その上に被せる枝葉。この段階での仕分けが、後の「人力積み込み」のスピードを決定づける。2人の職人が、空と地上でそれぞれの役割を完璧にこなす。切り分けられた材が整然と並べられていくにつれ、午前中の激闘の跡が、少しずつ「搬出可能な資源」へと姿を変えていった。




④積み込み作業

「小切り」によって扱いやすいサイズに解体された材を、2トンダンプへと積み込んでいく。この「積み込み作業」こそ、現場の美観を左右する総仕上げの前段階だ。高台にあるお宅ゆえ、車両を停めている場所までは一定の距離がある。切り出された大量の材を、2人の連携で一気に運び出していく。

2トンダンプの荷台には、あらかじめコンパネ(木製パネル)を立て、積載量を確保する準備を整えた。今回の現場で特筆すべきは、その積載の密度だ。ただ放り投げるのではなく、太い幹を土台にし、その上に細かな枝葉を重ねては自重で「踏み込み」をかける。10mの雑木と12mの杉から出た材は相当なボリュームだが、職人の手によって隙間なくパズルのように組み合わされ、ダンプ一杯に凝縮されていく。

作業中、お隣にお住まいの方から「うちの木も少し気になっているのだけれど……」とご相談をいただく場面があった。こうした地域の方々とのコミュニケーションも、現場の大切な一部だ。私たちは積み込みの手を休めることなく、丁寧に対応させていただく。住宅地での作業は、近隣の方々の理解があってこそ成り立つもの。常に「見られている」という意識を持ち、キビキビとした動きで作業を進めることが、信頼へと繋がっていく。

そして、伐採された材の山が消えていくのと並行して、施主様が大切にされているミカンの木の剪定も仕上げにかかる。積み込みで出たおが屑をブロワーで払い、庭の隅々まで清掃を徹底する。ダンプの荷台が緑で満たされ、逆に庭からは「不要な重圧」が消えていく。15時を過ぎた頃、高台を吹き抜ける強風がさらに勢いを増してきたが、地上の搬出作業を効率よく進めたことで、現場は確実に完了へのカウントダウンを刻んでいた。




⑤作業後

15時過ぎ。さいたま市の高台を吹き抜ける風は、午前中とは比較にならないほどの猛威を振るい始めていた。枝を落とした杉の幹が大きくしなり、周囲の電線も激しく鳴動している。我々「株式会社 樹」は、この時点で「安全を最優先した中断」という苦渋の、しかし絶対的な決断を下した。職人の意地よりも、施主様の大切な住まいと地域の安全を守ること。それがプロとしての本当の誠実さだからだ。

作業を中断し、最後は2人で庭の隅々まで掃き清める。強風で舞い上がったおが屑一つ残さず、ブロワーと竹箒で丁寧に回収していく。ふと見上げると、朝は鬱蒼としていた空に、確かな「光の道」ができていた。12mの杉は上部の枝を失って安全な姿となり、10mの雑木も整理されたことで、庭全体がパッと明るい表情を取り戻している。施主様もその変化を喜んでくださり、「また明日、風が止んだらお願いしますね」と温かい言葉をかけてくださった。

そして今日、もう一つの収穫があった。作業の様子をご覧になっていたお隣様から、「うちの木も見てほしい」と新たなご相談をいただいたのだ。高台の住宅地という密接な環境において、一軒の庭を整えることは、地域全体の安全と安心を創り出すことに直結する。私たちの仕事が信頼の輪を広げていることを実感し、胸が熱くなる。

1日目の工程は、予期せぬ自然の力によって幕を閉じた。しかし、2トンダンプ一杯に積み込まれた成果は、今日という一日の密度を物語っている。道具を片付け、車両のシートをガッチリと固定する。明日、風が止むのを待ち、私たちは再びこの高台へと戻ってくる。施主様の笑顔と、お隣様の新たな期待に応えるために。さいたま市の空が、再び穏やかに晴れ渡ることを願いながら、私たちは静かに現場を後にした。




記入者: 株式会社 樹

現場: 埼玉県さいたま市 個人宅(高台)

人員: 2人

完了日: 2026/04/07(作業1日目・強風により15時過ぎ中断)

成果: 10m雑木の伐採、12m杉の高所枝落とし、ミカンの木剪定を進行。2トンダンプ1台分の搬出を完了。高台特有の強風を考慮し、電線・住宅への二次被害防止のため適切な中断判断を実施。近隣(お隣様)からの新規案件相談あり。


 
 
 

最新記事

すべて表示
さいたま市・高台リベンジ!3人体制で挑む杉とシュロの完全伐採。信頼が繋ぐ新たなご縁

①作業前 2026年4月8日。昨日の猛烈な強風が嘘のように、さいたま市の空は突き抜けるような快晴に恵まれた。昨日の午後、安全を最優先して断腸の思いで下した「中断」という決断。その悔しさを晴らすべく、我々「株式会社 樹」は再びあの高台の現場へと戻ってきた。今日は昨日の2人体制から1人増員し、精鋭3人体制。機動力とパワーを底上げし、今日中に全ての工程を完遂させる構えだ。 現場に到着し、まずは昨日の作業

 
 
 
立川・敷地管理4日目。春の日差しと共に、「理想の景観」へと磨き上げる

①作業前 2026年4月6日、月曜日。新しい一週間が、立川の抜けるような青空とともに幕を開けた。我々「株式会社 樹」がこの広大な敷地に入ってから、今日で4日目。現場は引き続き除草作業を継続している。週末を挟み、春の生命力がさらに勢いを増した緑を前に、我々3人の気持ちも自ずと引き締まる。 朝8時前。軽バンから道具を降ろし、本日の作業範囲を確認する。現場は4日目ともなると、3人の間には言葉を介さずとも

 
 
 

コメント


bottom of page