top of page

八王子市鑓水、「神社の静寂を守るために。カシ・ナラ4本の巨木と向き合った、技術と信頼の2日目」

  • 執筆者の写真: いつきスタッフ
    いつきスタッフ
  • 56 分前
  • 読了時間: 7分

東京都八王子市鑓水。かつての絹の道が通り、歴史の静寂が今も守られているこの地で、私たちの「特殊伐採」ミッションは2日目を迎えました。

現場は、昨日に引き続き某神社の境内。昨日の作業で現場の空気感は掴んだものの、今日はいよいよ本丸とも言える「カシの木2本」と「ナラの木2本」の伐倒が控えています。25メートル級の巨木たちが、複雑に枝を絡ませながら空を覆うその姿は、何度見ても身が引き締まる光景です。



1. 2日目の幕開け:自然の重圧と「チルホール」の出番

昨日の疲れが少し残る身体を、冷たく引き締まった朝の空気がシャキッとさせてくれます。今日の相棒は、チェーンソーや登り道具一式、そして今回の「人力作戦」の要となる**「チルホール(手動ウィンカー)」**です。

重機が一切入れないこの現場において、重力だけに頼った伐倒はあまりに危険です。神社の社殿や石灯籠、そして隣接する住宅。これらをミリ単位で避けながら、狙った方向に巨木を導くためには、機械の力に代わる「確実なテンション(張力)」が必要になります。

ナイロンスリングを樹木に巻き付け、チルホールをセットする。レバーを引くたびに、「カチッ、カチッ」という金属音が境内に響きます。この小さな音が、数トンの重みを持つ巨木を制御するための、信頼の合図です。



2. 樹上のダンス:ツリークライミングによる解体

まずは、枝払いからスタートです。いきなり根本から切り倒すことは、この難所では不可能です。まずはクライマーが樹上へと登り、複雑に張り出した枝を一本ずつ落としていく「枝下ろし」を行います。

カシの木は、その名の通り「樫(かたし)」、非常に硬く重いのが特徴です。チェーンソーを当てるたびに、その抵抗感から木の力強さが伝わってきます。樹上20メートル、足場は不安定な枝の上。そこでチェーンソーを自在に操り、複雑に絡み合った枝を、下のスタッフが待ち構える安全なエリアへと、正確に誘導して切り離します。

写真に写っている、空を背負って枝に食らいつく職人の姿。これこそが、特殊伐採の真骨頂です。地上から見れば優雅に踊っているようにも見えるかもしれませんが、その内側では、風の流れ、木の重心、そしてロープの張り具合を常に計算し続ける、極限の集中力が維持されています。





3. 「現場飯」の至福:カップラーメンとおにぎりが繋ぐ活力

午前中の作業を終え、張り詰めた緊張感を一度リセットする時間がやってきました。 今日の昼食は、カップラーメンとおにぎり

「なーんだ、普通じゃないか」と思われるかもしれませんが、この現場で食べるカップラーメンには、どんな高級料理も敵わない「旨さ」があります。沸かしたお湯の温かさが五臓六腑に染み渡り、炭水化物のかたまりであるおにぎりが、午後からの激務を支えるエネルギーに変わっていく。

風に吹かれながら、今日これまでの作業の進捗を語り合い、次に切るカシの木の角度を再確認する。この「現場飯」の時間があるからこそ、私たちは再び、あの高い樹上へと挑むことができるのです。



4. 決戦の時:カシ・ナラ合計4本の伐倒開始

午後、いよいよメインイベントである伐倒(ばっとう)作業に入ります。 カシ2本、ナラ2本。どれも一筋縄ではいかない強敵です。まずはチルホールで、狙った方向へと絶妙なテンションをかけ続けます。張りすぎれば幹が割れる恐れがあり、緩めすぎれば制御を失う。この「引きの加減」こそが、経験に裏打ちされたプロの感覚です。

幹にチェーンソーを入れ、正確な「受け口」を作ります。神社の境内という、一切のミスが許されない神聖な場所。チェーンソーから放たれる木屑が舞い、空気中に木の香りが立ち込める中、いよいよ「追い口」を入れる。

「行くぞ!」という声。

チルホールのレバーが力強く引かれ、巨大なカシの木が、ゆっくりと、しかし抗えない重みを持って、私たちが用意した僅かなスペースへと倒れ込んでいきました。



5. 地上の「静かなる力」:チルホールが紡ぐ安全の糸

樹上のクライマーが放つ緊張感に応えるように、地上ではもう一つのドラマが進行していました。重機が入らないこの神社の現場で、25メートル級の巨木を狙い通りに倒すための命綱――それが「チルホール(手動ウィンカー)」による牽引作業です。

写真に写っている、地面にしっかりと踏ん張り、レバーを操るスタッフの姿をご覧ください。ここでは力任せに引くことは厳禁です。樹上のクライマーがチェーンソーを入れるタイミング、風の止み間、そして木の「しなり」を五感で感じ取りながら、絶妙なテンションを維持し続けます。

「もっと張れ!」「よし、そのまま!」

樹上と地上で交わされる鋭いコール。チルホールのワイヤーがピンと張り詰め、空気を切り裂くような緊張感が漂います。カシやナラといった重量のある広葉樹は、一度バランスを崩せば取り返しがつきません。しかし、このチルホールというアナログな道具を熟練の技術で操ることで、私たちは巨大な重力を味方につけ、安全という名の確信を積み上げていくのです。



6. 玉切りと搬出:職人の背中が語る「人力」の限界

伐倒が無事に完了したからといって、私たちの仕事が終わるわけではありません。むしろ、ここからが本当の意味での「総力戦」の始まりです。倒したカシ2本、ナラ2本の巨大な幹を、運び出せるサイズまで解体する「玉切り」作業に入ります。

今回の搬出条件は非常に厳しく、使用車両は小回りの利く「軽バン」のみ。この制約の中で効率よく材を運び出すためには、正確に「2mサイズ」に切り分け、さらに手作業で集積・積載しなければなりません。

カシの生木は驚くほど重く、直径のある部位になれば、丸太一つでも大人一人がかりの重労働になります。写真にある、太い丸太を背負うようにして運ぶ職人の姿は、まさにこの現場の過酷さと誠実さを物語っています。重機を使えば数分で終わる作業かもしれません。しかし、重機が拒まれる聖域だからこそ、私たちは一歩ずつ、自らの足で土を踏みしめ、汗を流して材を運び出します。

枝を払い、幹を刻み、一箇所に集積する。シンプルですが、最も体力を削られるこの工程において、私たちのチームワークはより一層強固なものになります。昼に食べたカップラーメンの熱量が、すべてこの腕の力、足の踏ん張りに変わっていく瞬間です。





7. 2日間のミッション完了:神社の空が広くなった日

夕刻、最後の材を軽バンに積み込み、周囲の清掃を終えたとき、神社の境内にはこれまでにない開放的な光が差し込んでいました。

2日間にわたる、八王子市鑓水での特殊伐採。

  • カシの木 2本

  • ナラの木 2本

  • 合計 4本の巨木伐倒

昨日から見守ってくださっていた施主様が、新しくなった空を見上げながら、深く頷いていらっしゃったのが印象的でした。「最初は本当に人力だけで大丈夫かと思ったけれど、あんなに鮮やかに、そして丁寧に片付けてくれるなんて……」という言葉をいただいたとき、この2日間の疲れはどこかへ吹き飛んでいきました。

私たちが残したのは、切り株だけではありません。台風や強風のたびに枝折れや倒木を心配していた施主様の「安心」であり、神社の社殿がこれからも長く守られていくための「未来」です。





8. 技術と真心で、地域の緑を支え続ける

八王子の歴史ある神社での作業を終え、私たちは再び機材をまとめ、相棒の軽バンとともに現場を後にします。

今回の現場は、重機不可、難所、強風、そして硬い広葉樹という、特殊伐採の難しさが凝縮されたような場所でした。しかし、チルホールを使いこなし、ナイロンスリングで命を繋ぎ、最後は人力で完遂する。この泥臭くも誇り高いプロセスこそが、私たち「イツキ(樹)」のスタイルです。

「どこに頼めばいいか分からないような難しい木がある」 「建物が近すぎて、もう手遅れかもしれない」

そんな不安を抱えている方は、ぜひ一度ご相談ください。私たちは、最新のツリークライミング技術と、現場で培った知恵、そして何より「お客様の安心を第一に考える真心」を持って、どんな難所へも駆けつけます。

八王子の空をより明るく、より安全に。 明日もまた、私たちはどこかの街で、一本の木と向き合い続けます。




 
 
 

コメント


bottom of page