川越市中台・個人宅の守り神、樹高15mの巨木カシを挑む。住宅街に響く職人の精密な連携と安全への誓い
- いつきスタッフ

- 14 時間前
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更新日:3 時間前
①作業前:青空を突く15mの巨塔。カシの木と対峙する緊張の朝
2026年2月28日。私たちは、歴史情緒と新しい住宅が混在する街、川越市中台の個人宅へと到着しました。本日の主役は、庭の片隅で天を突くようにそびえ立つ、樹高約15mのカシの木です。
見上げれば、青く澄み渡った冬の終わりの空を背景に、カシの枝葉が力強く広がっています。15mという高さは、一般的な2階建て住宅の屋根を優に超え、周囲の景観においても圧倒的な存在感を放っています。これほどの巨木を、隣家や電線、そして施主様の大切な家屋が密集する個人宅の庭で伐採するのは、まさに「空間のパズル」を解くような精密な作業が求められます。
「いい天気だ。風も安定している。これなら枝の落としどころも読みやすいな」
「ああ。だが15mだ。地上からは小さく見えても、登れば景色は一変する。足元の確保を最優先に行こう」
スタッフ2名は、作業開始前のミーティングで現場の状況を克密に確認します。今回の現場での最大のこだわりは、やはり「音」と「切り粉(きりこ)」の制御です。近隣の方々が穏やかに過ごす土曜日の午後。チェーンソーの回転数をコントロールし、可能な限り不快な音を立てないこと、そして細かな木屑が隣家の洗濯物や庭先に飛ばないよう、風の動きを読み切ることがプロとしてのマナーです。
機材の準備が進む傍ら、私たちは「登り道具一式」を念入りにチェックします。今回の難易度は「小」と設定していますが、それは私たちの経験に照らしてのことであり、高さ15mの樹上は常に死と隣り合わせの緊張感が漂います。サドル、ロープ、カラビナ……命を預ける道具たちを一つずつ手に取り、その状態を確かめる時間は、職人が「日常」から「戦場」へと意識を切り替える神聖な儀式でもあります。
2tダンプを最適な位置に配置し、人力での積み込み動線を確保。1日完結という制約の中で、いかに無駄なく、かつ完璧な安全管理のもとでこの巨塔を下ろしていくか。私たちはカシの木の幹に手を当て、これから始まる対話への敬意を払いながら、最初の一歩を踏み出しました。

②枝落とし作業:樹高15mの最上部、空と家屋の境界線で繰り広げられる精密な断裁
いよいよ、本日のメインイベントであるカシの木の解体が始まりました。地上から見上げる15mという高さは、登攀(とうはん)道具を身につけ、自らの足で幹を蹴り、高度を上げていくスタッフにとっては全く別の顔を見せます。樹上に登れば、そこには遮るもののない川越の街並みが広がりますが、同時にすぐ足元には施主様の家屋の屋根や樋(とい)が迫る、極限の作業空間が待ち受けています。
今回の枝落としにおいて、最も重要なのは「落としどころ」の完璧なコントロールです。カシの枝は密度が高く、一本の枝でもかなりの重量があります。これを無造作に切り落とせば、真下にある屋根瓦を粉砕したり、雨樋を歪ませたりするリスクが非常に高い現場です。
「リギング(吊り切り)の支点、よし。ゆっくり荷重をかけてくれ」
「了解。屋根を避けて、庭のフリースペースへ誘導する」
スタッフは樹上でサドルに身を預け、体幹を安定させながらチェーンソーを操ります。大きな枝に対しては、ロープをかけて地上と連携し、切り落とした瞬間にドスンと落とすのではなく、空中を滑らせるようにして安全な場所へと着地させる高度な技術を駆使します。チェーンソーの鋭い刃がカシの硬い繊維を断ち切るたびに、周囲には瑞々しい樹木の香りが立ち込め、空が一段と広く感じられるようになっていきます。
ここで、本日唯一のヒヤリハットが発生しました。木登り中、樹皮が予想以上に滑りやすく、足元が不意に流されそうになったのです。しかし、そこは常に最悪の事態を想定して二重のバックアップを取っているプロの備えが功を奏しました。瞬時にロープで体重を支え、体制を立て直します。
「足元、かなり滑るぞ!樹皮の乾燥具合が場所によって違う。注意しろ」
「了解。無理な姿勢は取らず、確実にステップを確保してから刃を入れる」
こうした緊張感の中、私たちは一枝一枝に敬意を払いながら、丁寧に、かつ着実にボリュームを削ぎ落としていきます。地上では、もう一人のスタッフが落下した枝を即座に回収。2tダンプへの積み込みをスムーズに行うため、人力で運べるサイズに細分化しながら、動線を確保し続けます。
特筆すべきは、住宅密集地ならではの「切り粉(きりこ)」への配慮です。高い位置からの作業は風の影響を受けやすく、細かな木屑が隣家の方へ飛びやすくなります。私たちはチェーンソーの角度を調整し、切り粉の排出方向を可能な限り自社敷地内へと向ける工夫を施しました。
巨木の冠(かんむり)が少しずつ薄くなり、15mあったカシの木が次第にその骨組みを露わにしていく様子は、まさに職人による「引き算の芸術」。屋根を傷一つつけることなく、全ての枝を地上へと下ろしたとき、樹上のスタッフと地上のスタッフの間には、言葉を超えたプロ同士の信頼が静かに通い合っていました。





③伐倒作業:15mの巨躯を大地へと下ろす、緊迫のラストアクション
枝落としが完了し、天を突くようだったカシの木は、今は一本の巨大な「柱」となって静かにその時を待っています。しかし、ここからが本当の勝負です。残された重量感のある主幹を、限られた庭のスペース、そして密集する家屋の隙間へと正確に倒し込む「伐倒作業」が始まります。
地上のスタッフは、伐倒方向をミリ単位で制御するため、幹の数カ所に誘導ロープをセットします。
「よし、受け口の角度OK。家屋側への傾きをロープでしっかり相殺してくれ」
「了解。テンションを一定に保つ。いつでもいけるぞ」
スタッフが慎重にチェーンソーの刃を根元に入れます。住宅街の静寂の中に、カシの硬い幹を切り進む力強い音が響き渡ります。受け口を作り、反対側から追い口を入れる際、樹上の作業とはまた異なる地上の緊張感が現場を支配します。15m級の幹が持つ位置エネルギーは凄まじく、万が一方向が逸れれば、家屋や塀に甚大な被害を与えかねません。
「……倒れるぞ!」
合図とともにロープが引かれ、巨大なカシの幹がゆっくりと、しかし抗いがたい重力に従って傾き始めます。計算通り、家屋やフェンスのわずかな隙間を縫うようにして、幹は予定していた安全地帯へと吸い込まれていきました。ズシンという、大地を揺らす重厚な衝撃音。それが、この巨木との対話が完結した合図でした。
倒れた直後、私たちは間髪入れずに「玉切り」作業へと移ります。15mの幹を、2tダンプへの人力積み込みが可能なサイズへと細分化していくのです。
「ここ、樹液でかなり滑るな。足元に注意して作業を続けよう」
「了解。切り粉(きりこ)が溜まる前に一度掃き出す。音も最小限にな」
カシの木特有の硬質な切り応えを楽しみながら、私たちは一本の巨木を整然とした「材」へと変えていきます。人力での積み込みは体力勝負ですが、2名のスタッフは息の合った動きで、次々と重い丸太をダンプへと運び込みます。このスピーディーな撤収こそが、近隣住民の方々への負担を最小限に抑える、私たちのマナーの形です。
カシの木が立っていた場所には、今、切り立ての年輪が誇らしげに顔を出し、瑞々しい香りがお庭全体を包み込んでいます。巨塔を下ろした達成感とともに、私たちは最終仕上げである清掃と撤収へと、さらにギアを上げていきました。

④作業後:視界を抜ける川越の空と、職人の矜持が宿る「白紙」の庭
川越市中台でのカシの木伐採プロジェクトは、予定通り17時を前にすべての工程を完遂しました。作業開始前、お庭の主として15mの高さから周囲を見守っていた巨木は姿を消し、そこには施主様さえも「こんなに広かったのか」と驚かれるような、開放感あふれる空間が生まれています。
このプロジェクトの真の完結は、木を倒すことではなく、その後の「清掃」と「整地」にあります。私たちは、枝葉一つ、切り粉(きりこ)一粒までも逃さない徹底した片付けを行いました。住宅密集地の個人宅において、近隣の方々への最大の誠意は、作業の痕跡を一切残さず、静寂と清潔な環境をいち早く取り戻すことに他なりません。
「屋根の上、樋(とい)の中もブロワーで飛ばした。完璧だ」
「道路側の路面も一点の曇りなし。これで安心して引き渡しができるね」
スタッフ2名は、愛車の2tダンプに積み込まれた膨大なカシの材を前に、今日一日の激闘を振り返ります。15mの樹上での枝落とし、足元が滑ったヒヤリハット、そして精密な伐倒。それらすべての緊張感から解き放たれ、夕暮れの柔らかな光に包まれたお庭を眺めるこの瞬間こそが、職人にとっての最高の報酬です。
カシの木が立っていた場所には、今、美しく切り揃えられた根株が静かに佇んでいます。お庭に差し込む光の量は劇的に増え、これまで巨木の影に隠れていた植栽たちも、これからは存分に陽光を浴びることができるでしょう。施主様のこれからの暮らしが、この新しく拓かれた空のように、明るく晴れやかなものになることを確信しています。
すべての道具をダンプに収め、最後にもう一度、路面に泥や木屑が落ちていないかを確認します。川越の街並みに再び穏やかな日常が戻る中、私たちは確かな達成感を胸に現場を後にしました。一本の木が去り、新しい風景が始まる。その橋渡しを無事に終えられた誇りを胸に、私たちの歩みはまた、次の空を拓くための現場へと続いていきます。


記入者:株式会社 樹
現場: 川越市中台(個人宅)
人員: 2名
完了日: 2026年2月28日(土曜日)
成果: カシの木(約15m)伐採完遂、2tダンプ満載搬出、完璧な清掃・撤収完了



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