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【八王子市鑓水・7日目】コナラと120本の竹が織り成す「緑の迷宮」。チェーンソーを拒む竹林との泥臭い格闘戦

  • 執筆者の写真: いつきスタッフ
    いつきスタッフ
  • 2 日前
  • 読了時間: 12分

①作業前:静寂の境界線、120本の竹が潜む「緑の障壁」


2026年3月6日。八王子市鑓水の現場は、今日から新たな局面を迎える。 これまでの5日間の主役が「天を突く25メートルのナラ」であったなら、今日からの主役は、15メートルのコナラ4本、そして背後に控える約120本の竹林だ。

写真は、作業開始直前の現場。そこには、ただの「木」や「竹」ではなく、数年、数十年という月日をかけて複雑に絡み合い、もはや一つの巨大な「壁」と化した自然が立ちはだかっていた。

今回のポイントは、株式会社クレーベスト様のすぐ近く、という立地にある。隣接する敷地との境界が非常に近く、少しの油断が大きなトラブルに直結する。職人として最も神経を使う「配慮」と「精度」が同時に求められる場所だ。


「竹か……。こいつは厄介だぞ」


誰ともなく呟く。竹は木とは違う。そのしなり、中空の構造、そして何より密度。120本という数字は、ただの作業量ではない。一本一本が互いに絡み合い、どこをどう切り崩せば安全に解体できるか。その「パズル」を解く前の、嵐の前の静けさが現場に漂う。

時刻は午前8時。 隣家や近隣企業への配慮から、大きな音出しは8時を過ぎてからと決めている。チェーンソーの混合燃料を注入し、登り道具のベルトを締め直す。静かな住宅街の端で、我々3人の「7日目」が静かに動き出した。



作業前
作業前


②竹伐採作業:120本の迷宮、しなりと空洞が招く「挟まり」の罠


8時を回り、住宅街の目覚めに合わせるようにして、我々は竹林の解体に着手した。対象は約120本。一本一本はコナラほどの太さはないが、その密度が問題だ。竹同士が上部で複雑に絡み合い、根元を切っても倒れてこない「掛かり竹」が続出する、極めてストレスフルな作業となる。

写真は、斜面に密集する竹林の根元にチェーンソーを当てる一幕だ。

竹伐採の厄介な点は、その独特な弾性と内部の空洞にある。木を伐るのとは全く違う感覚。刃を入れた瞬間、竹の繊維が粘り、予期せぬ方向へしなる。


「……チッ、またか」


作業中、不快な感触が手に伝わる。チェーンソーのバーが、竹の自重としなりによって、逃げ場のない空洞の中にガッチリと挟み込まれた。無理に引き抜こうとすれば刃を傷め、下手にこじればバーが曲がる。竹林の中では、この「挟まれ」との戦いが延々と続く。

想定外だったのは、これほどまでに竹同士が「スクラム」を組んでいることだ。一本を切り離しても、隣の竹がそれを離さない。結局、周囲の竹を数本まとめて処理しなければ、倒すことすら叶わない。120本という数字が、ただの作業量以上の重みを持って我々の体力を削っていく。

隣接する敷地を汚さないよう、倒す方向には細心の注意を払う。一歩間違えば、竹のしなりで隣地の構造物を叩きかねない。神経を研ぎ澄ませ、挟まったチェーンを慎重に救出しながら、我々は一帯を覆う「緑の壁」を一本ずつ、着実に切り崩していった。




竹伐採作業
竹伐採作業


③枝落とし作業:隣地への境界線、数センチの狂いも許されない高所戦


竹林という「足元の迷宮」を突破した我々の次なる標的は、15メートルのコナラだ。 主幹を倒す前に、まずは樹上に登り、周囲の安全を確保するための「枝払い」を行う。写真は、コナラの複雑に伸びた枝に身を預け、チェーンソーを振るう緊迫の瞬間だ。

今回のコナラは、株式会社クレーベスト様の敷地や隣接する他の方の土地に非常に近い場所に立っている。ただ切り落とせばいいわけではない。万が一にも隣地の建物やフェンスを傷つけることは許されない。我々が最も重視したのは、「隣の敷地をなるべく汚さない、傷つけない」というマナーと精度の徹底だ。

樹上10メートルを越える場所。 風が吹けば、コナラの細い枝先は大きくしなり、私の体ごと揺さぶる。 その不安定な足場で、隣地へ張り出した枝を慎重に誘導しながら切り落としていく。切り落とした枝が予期せぬ方向へ跳ねないよう、一太刀ごとに落下の軌道を計算する。


「よし、あそこなら大丈夫だ」


地上で状況を見守る仲間とアイコンタクトを交わし、最後の一枝を落とす。 枝が落ちた後の静寂。隣地の住人の方から


「ありがとう、助かるよ」


と声をかけられた。その一言で、張り詰めていた肩の力がわずかに抜ける。 高所の恐怖や肉体の疲労を超えて、職人としての誠実さが報われる瞬間だ。

だが、空が少しずつ開けてきたとはいえ、まだ4本のコナラのうちの序盤に過ぎない。 集中力を切らすことなく、我々は次なる枝へと手をかけた。




枝落とし作業
枝落とし作業


④伐倒作業:15メートルの質量を御す、境界線上の「一点」への落とし込み


枝払いを終え、スリムになったコナラ。しかし、その主幹には15メートル分の質量が凝縮されている。これを、隣接する株式会社クレーベスト様の敷地や、複雑に走る境界線に一切触れさせることなく「一点」に沈める。それが、この7日目における我々の最大の使命だ。

写真は、いよいよコナラの根本にチェーンソーの刃を入れ、受け口を作っている決定的瞬間だ。

コナラは、その名の通り非常に硬く、粘りの強い木だ。刃を入れる角度が数度狂うだけで、倒れる軌道は大きく逸れる。さらに、足元には先ほど処理したばかりの竹の切り株が無数に突き出し、スパイクを置く場所すら選ばなければならない。


「追い口、入れるぞ。」


エンジンの回転数を上げ、慎重に背後から刃を滑り込ませる。木が自重で鳴り始め、天辺がゆっくりと、しかし確実な加速を持って動き出す。その瞬間、私はチェーンソーを引き抜き、安全な退避路へと身を躱した。

「ドォォォン……!」

空気を震わせる地響き。15メートルの主幹は、狙い通りの「安全圏」へと、一寸の狂いもなく横たわった。倒れた先で舞い上がる切り屑と砂埃。隣接する敷地のフェンスとの距離は、わずか数十センチ。

この精度こそが、我々がプロとして譲れない一線だ。


「よし、次だ。」


一息つく間もなく、我々は地に伏した巨躯の解体へと意識を切り替えた。



伐倒作業
伐倒作業


⑤玉切り作業:沈黙した巨躯を解体する、精緻な「切断」のリズム


地に伏した15メートルのコナラ。その圧倒的な重量感は、倒した瞬間から「動かせない障壁」へと変わる。ここからは、運び出しを可能にするための「玉切り」のフェーズだ。

写真は、倒伏したコナラの幹に対し、チェーンソーを垂直に当てていく一幕。 コナラは密度が高く、乾燥すれば薪としての価値も高いが、生木のうちはその分、強烈に重い。人力での集積を前提とするこの現場では、丸太一本あたりの重量を、運ぶ人間の限界値に合わせて精密に切り分けなければならない。


「……よし、このサイズだ。」


チェーンソーの刃が木に食い込むたび、周囲には芳醇な木の香りと共に、大量の切り屑が舞い上がる。 単に切るだけではない。丸太が自重でたわんでいる箇所では、刃を入れれば幹が閉じてチェーンソーを挟み込もうとしてくる。竹に挟まれた午前中の苛立ちを教訓に、幹のテンションを読み、上から、あるいは下からと刃を入れる方向を瞬時に判断していく。

一定のリズムで響くエンジン音。 切り落とされた丸太が「ゴトッ」と地面を叩く振動。 この繰り返しが、混乱した現場に「秩序」を取り戻していく。切り口を揃え、次なる集積作業の導線を確保しながら、我々は沈黙した巨躯を一つひとつ、運び出せる「資源」へと変えていった。




玉切り作業
玉切り作業

⑥お昼休憩:乾いた冬枯れの地で、静かに「生」を噛みしめる


15メートルのコナラを地に伏せ、120本の竹林と格闘し、神経と筋肉を限界まで使い果たした午前。 地に足をつけ、ようやく訪れる昼の静寂は、職人にとって聖域にも似た時間だ。

写真は、作業エリアのすぐ側に広がる、冬枯れの芝生に腰を下ろして弁当を広げる一幕だ。 昨日までの町中華の熱気とは打って変わり、今日は遮るもののない空の下、吹き抜ける風を肌に感じながらの食事となった。


「……ふぅ、やっと落ち着いたな」


誰からともなく漏れる短い溜息。 竹林の中でチェーンソーを挟まれ、泥に足を取られながら踏ん張った肉体は、想像以上に熱を帯びている。冷たい地面に腰を下ろす感覚が、今はたまらなく心地よい。

広げたのは、素朴なおにぎりと惣菜。 華やかな彩りはないが、使い果たしたエネルギーを補填するには十分すぎる「ご馳走」だ。黙々と噛みしめる米の甘み、喉を鳴らして飲み込む茶の温度。会話がなくても、隣で同じように泥にまみれた仲間がいれば、それだけで十分な連帯感がある。

視線の先には、自分たちが切り拓いたばかりの景色が広がっている。 絡み合っていた竹が無くなり、コナラが消えたことで、遠くの街並みがより鮮明に見えるようになった。この「成果」こそが、疲労を癒す最高のエッセンスだ。

休憩時間は、次の死線へのカウントダウンでもある。 食べ終えれば、再び竹林のジャングルへと戻り、残されたコナラを仕留めなければならない。 束の間の休息を終え、我々は重い腰を上げた。その目は、すでに午後の作業プランを冷静に分析し始めている。



お昼休憩
お昼休憩


⑦竹伐採作業(午後):視界を遮る「緑の檻」との消耗戦


腹を満たし、重い腰を上げた我々を待っていたのは、依然として密度を失わない竹林の群れだ。午後の陽光は竹の葉に遮られ、林の中には奇妙な薄暗さと、停滞した空気が漂っている。

写真は、さらに奥まったエリアへと踏み込み、密集する竹の「檻」にチェーンソーを当てる局面だ。

竹林の厄介さは、作業を進めるほどに増していく。切り倒した竹を運び出そうにも、周囲の竹が複雑に枝を絡ませ、まるで離すまいと抵抗してくる。一本を抜くために全身の力を込め、引き摺り出す。その繰り返しが、午前の作業で疲弊した腕の筋肉に、容赦なく追い打ちをかける。

さらに、午後特有の「焦り」も敵になる。120本という膨大な数。目に見えて景色が開けないもどかしさ。だが、ここで強引に切り進めれば、午前中以上にチェーンソーを挟まれ、最悪の場合はバーを曲げてしまう。竹の中空構造が生み出す、あの独特の「逃げ場のない圧力」を慎重に見極めながら、一太刀一太刀を刻んでいく。

視界を遮る竹を払い、ようやく一本のコナラの根元が姿を現した。 この小さな勝利の積み重ねだけが、この「緑の迷宮」を突破する唯一の手段だ。汗が目に入り、切り屑が首筋を刺す。閉塞感に包まれた竹林の中で、我々の孤独な格闘は延々と続いた。



竹伐採作業(午後)
竹伐採作業(午後)


⑧目立て:静寂を研ぎ澄ます、0.1ミリの狂いを許さぬ儀式


竹林との激闘は、我々の肉体だけでなく、道具にも確実にダメージを蓄積させていた。 特に竹は非常に硬い繊維を持ち、さらに地表近くを伐れば、雨上がりの泥や砂を噛む。わずか数十分の作業で、チェーンソーの刃(ソーチェン)は目に見えてその鋭利さを失い、切り口は「断つ」のではなく「擦る」ような鈍い感触へと変わっていく。

写真は、作業の手を止め、丸ヤスリ一本で刃を研ぎ直す「目立て」の瞬間だ。

周囲の騒音を忘れ、地面に腰を下ろして一刃一刃と向き合う。 目立ては、単なるメンテナンスではない。職人にとっての「精神統一」だ。ヤスリを当てる角度、押し出す力加減。0.1ミリ、あるいは数度の狂いが、午後の伐倒作業の安全性を大きく左右する。

「……よし、戻った。」

指先で刃の返りを確認する。 研ぎ澄まされた刃先は、冬の陽光を鈍く跳ね返し、再び獲物を捉える準備が整ったことを告げている。効率を優先して鈍った刃を使い続ければ、無理な力が入り、午前の「挟まれ」のようなトラブルを誘発する。急がば回れ。この10分の静寂が、残された数時間の安全を担保するのだ。

再び立ち上がり、スターターロープを引く。 研ぎ直されたチェーンソーは、先ほどまでとは明らかに違う、高く鋭い咆哮を竹林に響かせた。



目立て
目立て

⑨伐倒作業:研ぎ澄まされた刃が描く、迷いなき終止符


目立てを終えたチェーンソーは、もはや別物だ。スターターロープを引き、再び響き渡る咆哮には、先ほどまでの「焦燥」を切り裂くような鋭さが宿っている。

写真は、竹林の包囲網を突破し、残るコナラの主幹へと最後の一太刀を入れようとする、緊念の一幕だ。

竹林に囲まれ、十分な退避スペースすら確保できない極限の状況。研ぎ直された刃先がコナラの木肌に触れた瞬間、抵抗を感じさせることなく吸い込まれるように食い込んでいく。0.1ミリの狂いもなく受け口を作り、背後から追い口を刻む。目立てによって復活した「切れ味」は、作業のスピードを上げるだけでなく、職人の心に「確信」という名の余裕をもたらす。


「倒れるぞ!」


竹が絡み合う嫌な摩擦音を力技で押し切り、15メートルの主幹が重力に身を委ねる。 研ぎ澄まされた感覚の中で、木は我々が描いた通りの軌道で竹林を割り、地面へと沈んでいった。チェーンソーを止め、立ち昇る白煙を眺める。

道具を信じ、技術で応える。 この一連のリズムが戻った今、鑓水の現場に、停滞の文字はない。



伐倒作業
伐倒作業

⑩玉切り作業:沈黙したコナラを刻み、現場に「秩序」を取り戻す


伐倒されたばかりのコナラが横たわる。その姿は、数分前までの猛々しさを失い、静かに次の役割を待っているかのようだ。だが、この巨大な「材」を人力で動かすには、職人の手による解体――玉切りが不可欠だ。

写真は、倒伏したコナラの幹に対し、再びチェーンソーを当てる一幕だ。

コナラは密度が極めて高く、その重量は生木のままだと想像を絶する。人力で集積場所まで運ぶためには、一太刀ごとに運ぶ人間の体力を考慮した「適正なサイズ」を見極めなければならない。

ここでも、午前中の竹林での苦労が教訓となる。竹と同様、倒れた木もまた複雑なテンションを孕んでいる。接地している場所、浮いている場所。不用意に刃を入れれば、数トンの自重がチェーンソーのバーを飲み込み、再び作業を中断させるだろう。


「……よし、ここは下から抜くぞ。」


木がたわむ方向を読み、慎重に、かつ迷いなく刃を走らせる。 切り口から飛び散るフレッシュな木屑が、午後の陽光を浴びてキラキラと舞う。 一本の長い幹が、規則正しい丸太へと姿を変えていく。その「コトッ」という心地よい着地音が重なるたび、混乱していた現場に確かな秩序が戻り始める。



玉切り作業
玉切り作業


⑪作業後:120本の記憶を刻み、中盤戦の終わりへ


17時。 住宅街の家々に明かりが灯り始める頃、鑓水の現場にようやく静寂が訪れた。 写真は、今日の戦いを終えた直後の風景だ。

朝、そこにあった「竹の障壁」は消え、コナラの威圧感も今は積み上げられた丸太の列へと変わっている。隣接する株式会社クレーベスト様の敷地や、近隣の土地を汚さぬよう、最後まで箒を入れ、境界線を整える。その誠実な仕事ぶりが、「ありがとう」という隣地の方からの言葉に結実した。

7日目。当初は今日が最終日になるかと思われたが、この現場の深さは我々の予想を上回っている。120本の竹、15メートルのコナラ。それらと対峙した証は、我々の泥にまみれた作業着と、使い切ったソーチェンの刃に刻まれている。

この現場は、まだ続く。予定では12日から14日目まで。 完結はさせない。なぜなら、明日もまた、我々は新たな「木」という命、あるいは「竹」という迷宮に挑まなければならないからだ。

軽バンのエンジンをかけ、現場を後にする。 バックミラーに映る神社の森は、朝よりも少しだけ、その見通しを明るくしていた。



作業後
作業後

記入者: 株式会社 樹

現場: 東京都八王子市鑓水(株式会社クレーベスト付近)

人員: 3名

完了日: 2026年3月6日(金曜日)

成果: コナラの木(15m)4本伐倒、竹約120本伐倒・集積、現場清掃完遂

 
 
 

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