【八王子市鑓水・8日目】20m級コナラ7本の猛攻。4人の結束と、ぬかるむ足元で挑む「超・人力集積」の限界
- いつきスタッフ

- 1 日前
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①作業前:4人の結束で挑む、鑓水の「壁」への再挑戦
2026年3月7日。八王子市鑓水での格闘も8日目を迎えた。 今日は、昨日の経験を踏まえて人員を4名に増強。眼前に立ちはだかるのは、昨日よりもさらに高さを増した20メートル級のコナラ7本、そして依然として密度を誇る約80本の竹林だ。
写真は、作業開始直前の現場。雲一つない晴天が広がっているが、我々の足元には昨日までの湿気が残り、冷たい空気が停滞している。
今回のターゲットとなるコナラは、どれも20メートルに達する巨木ばかりだ。昨日よりもさらに隣接建物や境界線への距離が近く、4人の連携が勝敗を分けることになる。
「今日は数が多い。足元も悪いから、互いの位置を常に確認しろよ」
朝のミーティングで、リーダーの言葉が飛ぶ。 特に「人力での集積」が前提のこの現場において、コナラ7本という分量は、作業後半に凄まじい肉体的負担となって跳ね返ってくることが予想される。さらに、地面のぬかるみは昨日よりも深刻だ。踏ん張るべき足場が不安定な中での巨木伐採。それは、一歩間違えれば重大な事故に直結する。
8時。近隣住民への配慮から、静寂の中で登り道具一式の最終点検を行う。 「大変そうですね」と通りがかりの住民の方に声をかけられたが、その言葉には、プロへの期待と、この現場の異様とも言える難易度への驚きが混じっていた。
準備は整った。 4人の職人、3台のチェーンソー、そして重力。 鑓水の空の下、8日目の幕が上がる。

②枝落とし作業:20メートルの高嶺、4人の連携が編み出す「空中回廊」
8時過ぎ、近隣への騒音に配慮しながら、我々は20メートル級のコナラへのアタックを開始した。 今日は4名体制。一人が樹上を制し、残る3人が地上で落下の安全確保と枝の即時処理に回る。昨日よりも一段と高さを増した樹上からの景色は、まさに絶景だが、職人の目に映るのは「安全な落とし所」という一点のみだ。
写真は、密生する竹林を背景に、コナラの主幹へと登り詰めて枝を払う緊迫のシーンだ。
地上20メートルの世界では、微風すらも大きな揺れとなって体に伝わってくる。コナラ特有のゴツゴツとした樹皮にスパイクを効かせ、命綱に全体重を預ける。今回の難敵は、コナラの枝が背後の竹林や隣接する株式会社クレーベスト様の敷地側へと複雑に張り出していることだ。
「下、入るなよ!落とすぞ!」
樹上からの咆哮に、地上の仲間が即座に応える。4名体制になったことで、枝を落とした瞬間の「片付け」のスピードが劇的に向上した。これにより、樹上の作業員は枝が積み重なって足場が悪くなるのを待たずに、次々とカッティングに集中できる。
だが、2026年春の陽光が眩しく照らす一方で、樹上の作業員は別のリスクとも戦っていた。20メートルという高さゆえの、枝の「自重」だ。太い枝を切り離す際、予想外の方向に跳ねれば、自分自身や地上の仲間、さらには近隣のフェンスを直撃しかねない。
慎重に、しかし大胆に。 4人の呼吸を一つに合わせ、我々は巨大なコナラを一本ずつ、伐倒のための「裸の柱」へと変えていった。

③伐倒作業:ぬかるむ大地と20メートルの咆哮
枝を払い、天を突く一本の柱となった20メートルのコナラ。いよいよ、その巨躯を地に伏せさせる「伐倒」の刻が来た。今日は全部で7本。一本たりともミスは許されない。
写真は、受け口を作り終え、追い口にチェーンソーの刃を沈めていく緊迫の瞬間だ。
今回の最大の懸念は、昨日までの名残でひどくぬかるんだ足元だ。伐倒の際、職人は木の動きに合わせて瞬時に退避路へ逃げなければならない。しかし、一歩踏み出すごとに地下足袋が泥を噛み、自由を奪おうとする。
「チルホール、張れ!足元気をつけろよ!」
仲間の声が飛ぶ。20メートルもの高さがあるコナラは、倒れ始めるその一瞬まで、どちらに重心を移すか分からない。我々はチルホール(人力ウィンチ)で強制的に牽引し、ぬかるむ大地に深く足を踏ん張って、その数トンの意志を捻じ伏せた。
「メキメキッ……!」という、木が繊維を引き千切る断末魔のような音が響く。 次の瞬間、巨大なコナラは計算通りの軌道で空を切り裂き、泥を跳ね上げながら地響きを立てて横たわった。
一本倒すたびに、泥だらけの防護ズボンを叩き、すぐさま次の木へと向かう。この「足元を取られる恐怖」との戦いを、あと6回。4人の結束が、鑓水の地を揺らし続けていた。

④玉切り作業:沈黙した20メートルの巨躯を、運命の数へと刻む
轟音とともに地に伏した20メートルのコナラ。だが、倒した直後のそれは、まだ誰も動かすことのできない巨大な「質量」の塊に過ぎない。ここからが、人力集積を前提とした我々の真骨頂、精密な玉切り作業の始まりだ。
写真は、倒伏したコナラの主幹に対し、再びチェーンソーを当てる一幕だ。
コナラは密度が非常に高く、20メートル級ともなればその重量は想像を絶する。これを人力で運び出すためには、一太刀ごとに「持ち上げられる限界の重量」を計算し、均一なサイズに切り分ける必要がある。
「……よし、この長さなら運べるな」
チェーンソーの刃が硬いコナラの組織を断ち切り、周囲に芳醇な木の香りと共に、熱を帯びた切り屑を撒き散らす。足元は依然としてぬかるんでおり、切り進めるごとに丸太が地面に沈み込む。材が自重でたわむ「テンション」を見極めなければ、刃は一瞬で食い込まれ、作業は中断を余儀なくされるだろう。
一定のリズムで響くエンジン音。 4名体制となった今日は、一人が切れば、すぐさま残りのメンバーが次の運び出し工程へと意識を繋ぐ。この「解体」のスピードが、日没までに7本の巨木を片付けられるかどうかの分水嶺となる。我々は泥にまみれながら、沈黙した巨人を一つひとつ、運び出せる「資材」へと変えていった。

⑤集積作業:泥濘に抗う4人の執念、数トンの「重圧」を運び出す
玉切りを終えた瞬間から、この日の現場は「技術」から「純粋な体力」の勝負へと変貌を遂げた。20メートル級のコナラ7本、そして約80本の竹。それらすべてを「人力」で一箇所にまとめ上げる作業は、想像を絶する負荷となって我々の肉体に襲いかかる。
写真は、複雑に絡み合った竹の枝葉を掻き分け、足場の悪い斜面で格闘を続ける一幕だ。
今回の集積をより困難にさせたのは、午前中の伐倒作業でも我々を苦しめた「地面のぬかるみ」だ。切り分けたとはいえ、水分をたっぷり含んだコナラの丸太は一本数十分の質量を持つ。それを抱え上げ、一歩踏み出すたびに、地下足袋は泥の中にズルリと沈み込み、執拗に足首の自由を奪おうとする。
「……っし、あと半分だ!」
泥まみれになりながら、互いに声を掛け合う。4名体制になったことで、集積の効率は確かに上がった。しかし、往復回数が増えるにつれ、太腿の筋肉は悲鳴を上げ、腰には鋭い疲労が蓄積していく。通りがかりの近隣住民の方が足を止め、「……これは大変そうですね」と思わず絶句して声をかけてくる。その言葉通り、重機が入らないこの場所での集積は、まさに泥臭い職人魂だけで成り立っている。
積み上げられた残材の山が高くなるにつれ、現場の見通しは少しずつ改善されていく。だが、我々の作業着はすでに汗と泥にまみれ、呼吸は熱く、重い。 この「人力集積」という過酷な工程こそが、安全な境界線を作り上げるための、避けては通れない最後の関門なのだ。

⑥目立て:静寂の中で刃を研ぎ、後半戦の「鋭利」を取り戻す
激しい集積作業の合間、現場に束の間の静寂が訪れる。それは休憩時間ではない。チェーンソーが悲鳴を上げ始める前に行う、職人にとって最も重要な「対話」の時間――目立てだ。
写真は、使い込まれたチェーンソーを膝に乗せ、丸ヤスリを走らせる一幕だ。
今日の相手は20メートル級のコナラ7本、そして泥を噛んだ竹林だ。コナラの硬い繊維と、竹に付着した泥や砂は、恐ろしいスピードで刃先を丸めていく。切れ味の鈍った刃は、作業効率を下げるだけでなく、キックバックなどの事故を誘発する最大の要因となる。
「……よし、いい角が立ったな」
丸ヤスリを一方向に、迷いなく押し出す。 シュッ、シュッという規則正しい金属音が、冬の終わりの乾いた空気に響く。目立ての極意は、刃の角度を一定に保ち、0.1ミリ単位で「返り」を作ることにある。ぬかるむ足元で踏ん張った肉体の疲れを、この指先の集中力が一瞬だけ忘れさせてくれる。
この「静」の時間が、午後の「動」の質を決定づける。 研ぎ澄まされた刃先は、再び獲物を捕らえる準備を終えた。我々は再び立ち上がり、残された竹林の迷宮、そしてさらなる伐倒作業へと意識を切り替える。

⑦竹伐採作業:80本の「しなり」を制す、掃討戦の最終局面
目立てを終え、鋭利な切れ味を取り戻したチェーンソーを手に、我々は再び竹林の迷宮へと身を投じた。残る竹は約80本。数だけ聞けば午前中より少なく感じるが、蓄積した疲労と、より密度の高い奥部への侵攻が、我々の行く手を阻む。
写真は、斜面に密集する竹林のただ中に分け入り、一本ずつ確実に切り崩していく緊迫のシーンだ。
竹林作業の恐ろしさは、一本を切った瞬間に周囲の竹がどう動くか予測しきれない点にある。切り離された竹が、隣の竹の枝に引っかかり、まるで生き物のように頭上で跳ねる。あるいは、強烈なしなりを持って、作業員の背後から襲いかかってくる。
「挟まれた!」「こっち、引くぞ!」
密集地では、一人が切り、一人がしなりを抑え、一人が引き抜くという、4名体制ならではの「掃討作戦」が展開された。午前中に悩まされた「チェーンの挟まり」を回避するため、受け口の作り方ひとつにも細心の注意を払う。竹の中空構造が、刃を噛み込もうとする圧力を、力技ではなく「目立てした刃の切れ味」と「チームの連携」で受け流していく。
ぬかるむ地面の上で、竹の鋭い切り株(竹株)を避けながらの移動は、まさに地雷原を歩くような緊張感だ。一歩間違えれば、地下足袋を貫きかねない。その過酷な環境下で、我々は着実に「緑の壁」を解体し、コナラの巨躯を運び出すための広大な空間を切り拓いていった。


⑧倒木処理:迷宮の底に眠る「見えない敵」との決着
竹林の掃討作戦を進める中で、我々はもう一つの厄介な存在と対峙することになった。それは、厚い竹の葉と密集した幹の影に隠れていた「倒木」たちだ。いつからそこにあったのか、朽ちかけた巨躯が地を這い、新しく伐り倒した材の集積ルートを塞いでいる。
写真は、竹林の急斜面に横たわる巨大な倒木に対し、慎重にチェーンソーを入れる一幕だ。
倒木処理は、生きている木を伐るよりもある意味で危険を伴う。長い年月を経て地面と一体化しかけている材は、どこが腐朽し、どこに不自然な荷重がかかっているか判別しにくいからだ。刃を入れた瞬間に、材が予想外の方向に裂けたり、斜面を滑り落ちたりするリスクがある。
「……よし、ここは浮かせて切るぞ。」
足元のぬかるみに地下足袋を食い込ませ、不安定な姿勢のままチェーンソーを振るう。 4名体制の強みを活かし、一人が材の動きを監視しながら、一つひとつを運び出せるサイズへと解体していく。
これらの「見えない敵」を一つずつ片付けていくことで、現場の見通しは劇的に改善される。地面を覆っていた腐朽材が消え、本来の土壌が顔を出す。そのたびに、現場に漂っていた停滞した空気が、清々しい木の香りと共に通り抜けていくのを感じる。


⑨集積作業:泥濘と重力に抗う、魂の「超・人力搬出」
伐採、解体、そして竹林の掃討。それらすべての工程を経て生み出された膨大な残材を、最終的に一箇所へまとめ上げる「集積」の時間がやってきた。
写真は、丸太を肩に担ぎ、ぬかるむ急斜面を一段ずつ踏みしめる、文字通り「命を削る」ような搬出のひと幕だ。
20メートル級のコナラ7本分、そして80本の竹。その分量は、一箇所に積み上げれば小さな山ができるほどだ。重機が入らないこの現場では、これをすべて人間の肩と腰だけで運び出す。丸太一本の重みが、ぬかるんだ土壌を通して膝と足首に容赦なく突き刺さる。
「……あと、一本だ!踏ん張れ!」
4人の意識を鼓舞するように声が飛ぶ。疲労がピークに達したこの時間帯、最も恐ろしいのは足元のスリップだ。丸太を担いだ状態で足を取られれば、転倒による大怪我に直結する。泥を噛む地下足袋の感触を慎重に確かめながら、一歩、また一歩と斜面を攻略していく。
近隣住民の方が「大変そうですね」と絶句した理由は、この光景にあるのだろう。効率やスマートさとは無縁の、泥臭いまでの執念。だが、この執念こそが、荒れ果てた斜面に再び「人の管理が行き届いた平穏」を取り戻すための唯一の鍵なのだ。
運び出した材が整然と積み重なるにつれ、我々の肩にかかる物理的な重みは、確かな達成感へと昇華されていった。

⑩作業後:巨躯が消え、光が射し込む「鑓水の再生」
17時、鳴り響いていたチェーンソーの咆哮が止み、現場に静寂が戻った。 朝、我々の視界を遮っていた「緑の壁」は消え去り、そこには驚くほど清々しい空間が広がっている。
写真は、すべての作業を終えた直後の風景だ。
20メートル級のコナラ7本が姿を消し、80本の竹が整理されたことで、これまで届かなかった夕陽の光が地面を明るく照らしている。人力集積という過酷な工程を経て、散乱していた枝葉や丸太は一点にまとめられ、現場は整然とした秩序を取り戻した。
「本当にお疲れ様でした。見違えるようですね」
近隣の方から再び声をかけられる。泥にまみれ、腰を伸ばすのも一苦労なほどの疲労感だが、この一言ですべての苦労が報われる。ぬかるむ足元に足を取られそうになりながら、4人で数トンの材を運び出した8日目。技術だけでなく、最後は「執念」がこの景色を作り出したのだ。
道具を片付け、軽トラに乗り込む。 バックミラーに映る現場は、明日からのさらなる作業を待つかのように、静かに凪いでいた。

記入者: 株式会社 樹
現場: 東京都八王子市鑓水(株式会社クレーベスト付近)
人員: 4名
完了日: 2026年3月7日(土曜日)
成果: 20m級コナラ7本伐倒、竹80本伐採、倒木処理、全残材の人力集積完遂



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