さいたま市中央区・地上25mの空中戦。少数精鋭2人で挑む、広葉樹の断崖剪定と伐採ドキュメント
- いつきスタッフ

- 6 時間前
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①作業前
2026年4月16日。さいたま市中央区、閑静な住宅街の一角。青く澄み渡った空を見上げると、そこには街の喧騒を忘れさせるほどの巨大な広葉樹たちが、圧倒的な存在感でそびえ立っていた。樹高は最大で25m。ビルに換算すればおよそ8階建てに相当する高さだ。
本日のミッションは、この25m級の巨木3本の枝落とし、および広葉樹5本の伐採である。住宅地という極めて制約の多い環境下、我々「株式会社 樹」が送り出したのは、わずか2人の少数精鋭。大型の重機や高所作業車はあえて投入せず、軽バン一台に「登り道具一式」と「チェーンソー2台」を詰め込んだ、機動力重視の布陣だ。
「25メートルか……いい眺めになりそうですね」。相棒と視線を交わし、不敵に笑う。重機が入れない狭小地や、繊細なコントロールが求められる住宅地において、最後に頼れるのは職人の「腕」と「ロープ」だけだ。
作業開始は、近隣への配慮を最優先し、住宅街が動き出す8時を待ってから。それまでの時間は、静寂の中で登攀(とうはん)用のロープを入念にチェックし、ハーネスの締め具合を確認する。一度地上を離れれば、そこは自己責任の領域。25mの空を味方につけるか、それとも拒まれるか。緊張感と高揚感が入り混じる中、さいたま市の住宅街に、いよいよ「空の男たち」の挑戦が始まった。

②高所伐採作業
住宅街の朝にチェーンソーの始動音が響き、いよいよ本日のメインイベントである25m級の空中戦が幕を開けた。今回、我々が選択したのは重機によるアプローチではなく、ロープとサドル、そして己の肉体を駆使したアーボリスト(樹上作業者)スタイルの登攀だ。
地上から見上げれば、枝先は風に揺れ、まるでお客様の家を優しく、しかし重く覆う巨大な傘のようにも見える。私はメインロープを巧みに操り、一歩一歩、垂直の幹を登っていく。10m、15m、20m……。高度が上がるにつれ、地上の相棒の姿が小さくなり、代わりにさいたま市中央区の街並みが足元に広がっていく。
この高さでの作業は、一瞬の油断が命取りになる。特に広葉樹は杉などの針葉樹と異なり、枝が複雑に、そして広範囲に分岐している。私は25mの頂部付近にポジショニングを確保すると、まずは家屋や電線に最も近い「危険な枝」から着手した。
「リギング(吊り切り)」の開始だ。切り離した巨大な枝が自由落下すれば、下の屋根やフェンスを容易に突き破ってしまう。そのため、全ての枝にロープを掛け、摩擦を利用したデバイスで重さをコントロールしながら、ゆっくりと、まるで羽を降ろすように地上へと誘導していく。
25mの梢でチェーンソーを振るう緊迫感。風で幹がしなるたび、木と自分が一体化するような感覚に陥る。住宅地の空を独占しながら、一本、また一本と、巨大な「傘」の骨組みを解体していく。しかし、これはまだ始まったばかり。この空の下には、まだ多くの巨木たちが我々の挑戦を待っている。




③伐倒作業
枝を払い落とし、天を突くような巨木たちが一本の巨大な「柱」となった。ここからが、住宅地という制約の多い環境下において、最も緊張感が高まる「伐倒(ばっとう)作業」だ。対象は、最大で25mに達する広葉樹の幹たち。隣接する家屋やフェンス、そして国道17号線を行き交う車の列。倒す方向を1度たりとも見誤ることは許されない。
「全員、退避距離を確保!」。少数精鋭の2人だが、その連携は完璧だ。相棒が周囲の安全を最終確認する中、私は木の重心と曲がり具合をミリ単位で見極め、倒したい方向に向けて「受け口」を刻む。チェーンソーの刃が幹の深部へと食い込み、広葉樹特有の硬い手応えが手に伝わる。続いて、反対側から「追い口」を入れ、木の重みをコントロールするための「ツル」を残す。
静寂の中、チェーンソーのエンジン音だけが轟く。追い口が深まるにつれ、巨大な幹がわずかにミシミシと音を立て始めた。クサビを打ち込み、最後の一押しを加えた瞬間、25mの巨躯がゆっくりと、しかし圧倒的な質量を持って宙を舞う。
「倒れるぞ!!」
地響きとともに、狙い通りの空き地へと広葉樹が横たわった。落下の衝撃で周囲の空気が震え、舞い上がる土埃。一本、また一本と、これまで空を遮っていた巨木たちが、職人の計算通りに地上へと平伏していく。この伐倒作業の連続により、初日にして現場の景色は劇的に塗り替えられた。しかし、これは長期プロジェクトの序章に過ぎない。倒された巨木という「巨大な横たわる山」を前に、私たちの戦いは明日からも、さらなる熱を帯びていくのだ。




④小切枝払い作業
25mの高さから無事に地上へと平伏した広葉樹の巨躯。しかし、倒して終わりではないのがプロの現場だ。ここからは、横たわった巨大な「山の塊」を、整然とした「材」へと変えていく「小切(こぎり)枝払い作業」が始まる。
今回の現場において特徴的なのは、伐採した材の処理方法だ。通常のような「全量搬出」ではなく、施主様のご要望に合わせて「指定の長さでカット」し、その場に整理していく。一見、運び出す手間が省けるように思えるが、実はこの工程こそが少数精鋭の2人体制における腕の見せ所となる。
地上の相棒と呼吸を合わせ、まずは複雑に絡み合った枝を一本ずつ正確に払い落としていく。広葉樹は枝の曲がりが強く、不用意に刃を入れると材が跳ねたり、チェーンソーが挟まったりする危険がある。私たちは材のテンション(かかっている圧力)を瞬時に読み取り、安全な角度から刃を入れていく。
枝を払って一本の丸太状になった幹は、メジャーを当てるまでもなく、熟練の目測で指定の長さに切り揃えていく。軽バン一台で乗り込んでいるため、作業スペースは限られている。切ったそばから材を種類ごとに仕分け、整然と積み上げていくことで、現場の安全と効率を同時に確保する。
チェーンソーがカシや他の広葉樹の硬い芯を捉えるたび、鋭い音とともに大量のおが屑が舞う。9時から始まったこの「解体作業」も、気がつけば午後。2人という最小限のユニットながら、無駄のない動きで巨大な山が少しずつ整理された「薪の予備軍」へと姿を変えていく。長期プロジェクトの初日、私たちは明日の作業がよりスムーズに進むよう、一分一秒を惜しんでチェーンソーを走らせ続けた。

⑤作業後
17時。さいたま市中央区の住宅街に、再び静寂が訪れる。9時からエンジン音を響かせ続けてきたチェーンソーを止め、ヘルメットを脱ぐと、心地よい疲労感とともに、朝とは劇的に変わった現場の景色が目に飛び込んできた。
見上げれば、朝は鬱蒼(うっそう)として住宅街を圧迫していた25mの広葉樹の梢(こずえ)が、美しく枝を落とされ、青空へと真っ直ぐに伸びている。伐倒された木々があった場所には、春の柔らかな陽光がたっぷりと降り注ぎ、地面が明るく輝いていた。2人という少数精鋭で挑んだ、この地上25mの空中戦。重機に頼らず、自分たちの体とロープワークだけで完遂させたという充足感は、何物にも代えがたい。
最後は、3人で現場全体の最終確認と清掃を行う。今回の現場は2トンダンプではなく軽バンでの参戦だったため、伐採した材の処理は「指定された場所への集積」という形をとった。小切りされたカシの材を、後で見ても美しいと思えるよう、種類ごとに整然と積み上げる。ブロワーでおが屑を払い、庭の隅々まで掃き清めると、カシの梢を通り抜ける風が、朝よりもずっと軽やかに、心地よく感じられた。
「本当にスッキリしました。これで台風が来ても安心です」。作業後、空を見上げながら施主様がこぼされたその一言に、今日一日の疲れが吹き飛んだ。25mという高さは、お客様にとっては「自分たちではどうしようもできない不安」そのもの。それを我々の技術で「安心」へと変える。これこそが、樹木管理のプロとしての使命である。
「喜んでもらえてよかった」。その充足感を3人で分かち合い、使い込まれた道具を軽バンへと積み込む。さいたま市の街に夕闇が迫る中、整備されたカシの木は、明日からの新しい光を浴びる準備を整えていた。今回の現場で得た信頼を糧に、私たちはまた次の空へと挑み続ける。

記入者: 株式会社 樹
現場: 埼玉県さいたま市中央区 個人宅
人員: 2人
完了日: 2026/04/16(作業1日目・ほぼ伐採完了)
成果: 樹高25mカシの木3本枝落とし、広葉樹5本伐採を初日でほぼ完了。住宅地という難条件下において、ロープワーク主体のアプローチにより安全に材を降ろし、指定場所への集積を実施。お客様より「安心した」との高い評価をいただき終了。


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