さいたま市日進・16号沿いの巨木攻略。樹高25mのカシと向き合う、2人きりの精鋭チームが刻む3日目の記録
- いつきスタッフ

- 7 時間前
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①作業前
空はどこまでも澄み渡り、春の陽光が容赦なく降り注いでいる。2026年3月27日。埼玉県さいたま市北区日進、国道16号沿いに佇む個人宅が、我々の今日の戦地だ。今日でこの現場も3日目。目の前に立ちはだかるのは、樹高25mに達しようかというカシの巨木である。
幹線道路沿いということもあり、耳を打つのは絶え間ない車の走行音。しかし、我々が対峙する巨木を見上げれば、そこには道路の喧騒とは無縁の、静謐な時間が流れているようにさえ感じる。このカシは、長年この場所で家を見守り続けてきた「守り神」のような存在だ。その威厳を損なうことなく、それでいて近隣や道路への安全を確保する。それが、今日我々に課せられた使命だ。
メンバーは私を含めて2人。25mという高所での作業、さらには道路面への枝落としという極めて神経を使う現場において、この人数は決して多くはない。しかし、3日間寝食を共にするように作業を続けてきた我々には、言葉を超えた信頼関係がある。8時を過ぎるのを静かに待ち、住宅街への配慮としてようやくチェーンソーの産声を上げる。登攀道具一式を身に纏い、一歩ずつ、空へと続く幹に足をかける。

②除伐
樹高25m。地上から見上げるのとは訳が違う。登攀道具一式を駆使し、カシの巨木の懐へと入り込む。足元には国道16号が走り、絶え間なく車が流れている。この高さでの「除伐」に近い剪定作業は、一瞬の油断が命取りになるだけでなく、階下の安全を完全に掌握し続けなければならない極限のミッションだ。
カシの木は枝が横に強く張り出し、その一本一本に重量がある。不用意に切り離せば、枝は予測不能な軌道を描いて落下する。ましてや、ここは歩行者も多い16号沿い。枝をただ落とすのではなく、ロープで吊り切りにし、地上にいる相棒との阿吽の呼吸で、指定した安全地帯へと静かに誘導していく。チェーンソーの産声が響くたびに、カシの巨大な影が整理され、空の面積が広がっていく。
高所から見下ろす16号は、まるでおもちゃの列のようだが、そこでハンドルを握る人々にとっては、我々の作業は何の前触れもなく訪れるリスクでしかない。だからこそ、地上での「見守る目」が重要になる。車が途切れる瞬間、歩行者が安全な距離を確保した瞬間。2人という少人数だからこそ、互いの視線だけで状況を読み取り、確実に、かつ迅速に枝を捌いていく。
枝を一本落とすたびに、25mの巨木にかかっていた張力がふっと抜けるのを感じる。密集し、重なり合っていた枝葉を間引くことで、木本来の骨格が浮かび上がってくる。それは、守り神としてのカシに、再び健やかな呼吸を取り戻させる作業でもあるのだ。手足に伝わる木の鼓動と、階下の喧騒。その境界線で、我々は一分一秒の集中力を研ぎ澄ませ、切り口一つひとつにプロとしての責任を刻み込んでいく。



③運搬集積
25mの巨木の懐から次々と切り出されるカシの枝葉。地上では、もう一人の相棒が間髪入れずにそれらを捌き、運搬の準備を整えていく。2人という最小限の編成だからこそ、一秒の停滞も許されない。切り落とされた枝を適切なサイズに玉切りし、2トンダンプの荷台へと人力で運び込む。この地道な往復作業が、現場の生命線だ。
カシの木は密度が高く、見かけによらずずっしりと重い。水分をたっぷり含んだ枝を数本まとめて肩に担ぎ、ダンプへと向かう。国道16号沿いという限られた作業スペースの中、通行人の邪魔にならないよう、そして自分たちの動線を最短にするよう、常に頭を使いながら足を動かす。重機を使えば容易い作業かもしれないが、細やかな配慮が求められる個人宅の現場では、結局のところ、この「人間の手」による積み込みが一番確実で、現場を美しく保つ鍵となる。
ダンプの荷台への積み込みにも、職人のパズル的な思考が求められる。大きな幹を土台にし、その隙間を埋めるように細かい枝葉を詰め込んでいく。限られた積載量を最大限に活かし、かつ走行中に枝一本落とさないよう、密度を意識して積み上げていくのだ。
作業の合間、ふと顔を上げれば、ダンプの荷台はすでに緑の山で溢れそうになっている。腕の筋肉はパンパンに張り、息も上がる。しかし、積み上がった枝葉の量は、そのまま自分たちが空を切り拓いてきた証でもある。2人の阿吽の呼吸で、現場から「不要なもの」を消し去り、新たな空間を創り出していく。この過酷な人力作業の先に、施主様が待ち望んだ「明るい庭」があることを、我々は一歩一歩の歩みの中で確信している。


⑤作業後
15時半。予定していたすべての作業が完了した。25mという圧倒的な高さで空を覆っていたカシの枝葉は整理され、国道16号を走る車からも、この家を長年守り続けてきた木の「骨格」が美しく見えるようになった 。鬱蒼としていた庭先には、3日前には届かなかったはずの春の柔らかな光が地上までまっすぐに差し込み、空間全体がまるで深呼吸を始めたかのような清々しさに満ちている 。
最後は、2人で現場の隅々まで清掃して回る。カシの細かい葉や枝片一つ残さず、人力で丁寧に、そして執拗に集めていく 。16号沿いという場所柄、我々の仕事は地域の方々の目に常に晒されている。作業が終わった後の道路や庭が、来る前よりも美しく整っていること。それこそが、施主様への感謝であり、この街で仕事をさせてもらう我々の誠意の形だ 。
3日間に及ぶ巨木との対峙を終え、道具をダンプに積み込む。腕の疲れは心地よく、やり遂げたという確かな手応えが胸に広がる。25mの頂から見たあの広い空と、地上で自分を支えてくれた相棒の姿を思い返す 。安全を最優先にし、誰も怪我をすることなく、この難易度の高い現場を完遂できた。その当たり前で最も重要な成果を噛み締めながら、我々は静かに現場を後にした。このカシの木が、新しくなった姿でこれからもこの家を、そして街を行き交う人々を優しく見守り続けてくれることを願いながら。
記入者: 株式会社 樹
現場: 埼玉県さいたま市日進個人宅(16号沿い)
人員: 2人
完了日: 2026/03/27
成果: 樹高25mのカシの木の精密剪定を完遂。国道16号および歩行者への安全を確保しつつ、2トンダンプへの人力積み込み・搬出を含め、3日間の工程を無事故で完了した。



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