さいたま市日進・巨木攻略ついに最終章。25m・20mのカシと雑木を相手に、精鋭2人が駆け抜けた5日間の結末
- いつきスタッフ

- 6 時間前
- 読了時間: 9分
①作業前
2026年3月29日、日曜日。埼玉県さいたま市北区日進、国道16号沿いの個人宅。今日でこの現場も5日目を数える。平日の喧騒が嘘のように静まり返った日曜日の朝、澄み渡る青空の下で我々「株式会社 樹」の2人は、ついに最終決戦の時を迎えた。
目の前にそびえ立つのは、樹高25mと20mのカシの木、そしてさらに20m級の雑木。5日間、来る日も来る日もこの巨木たちを見上げ、一本一本の枝の機嫌を伺いながら作業を続けてきた。今日がその集大成だ。日曜日の朝ということもあり、近隣の方々への配慮はいつも以上に欠かせない。8時を回るまでは大きな音が出る機械は使わず、登攀道具のチェックや作業動線の再確認を静かに行う。
施主様へ「本日もよろしくお願いいたします」と挨拶を交わす。昨日の約束通り、日曜日の作業を快諾してくださった感謝を胸に、ヘルメットの顎紐を締め直す。国道16号沿いは、休日であっても歩行者や自転車の通りが絶えない。25mの空から地上まで、一分の隙もない安全管理を2人で徹底することを改めて誓い合う。カシの木が放つ凛とした気配に呼応するように、我々の集中力も最高潮に達していた。


②剪定
25mと20mのカシ。そして、さらに20mの雑木。三本の巨木が並び立つ様は、まるで16号沿いを守る巨大な砦のようだ。5日目となる今日は、これらすべての木に対し、最終的な仕上げの剪定を行っていく。カシと雑木。木の種類が違えば、その性格も、枝の張り方も全く異なる。カシは硬く粘り強いが、雑木は脆く、不用意に力をかければ想定外の場所で折れる危険を孕んでいる。
私は2トンダンプの傍らに立ち、高所で作業を続ける相棒と常に無線で連絡を取り合う。5日間の連携で培われた阿吽の呼吸。一人が切り、一人が地上で枝の落下を完璧にコントロールする。カシの硬い繊維を断ち切る音、雑木を捌く音。木それぞれの「声」を聞き分けながら、一本一本、慎重にチェーンソーの刃を入れていく。
16号沿いという国道に面したこの現場では、道行く人々の視線も、我々の仕事の一部だ。剪定後、施主様が毎日見上げる空が、そして国道を走る車のドライバーたちが見る景色が、健やかで、安心できるものであるように。25mもの高所から、木の骨格を見極め、光と風の通り道を創り出していく。その切り口一つひとつに、5日間の格闘と、職人としての品格を刻み込んでいくのだ。



③登り作業
巨木攻略の要となる「登り作業」。樹高25mの頂付近に身を置くと、国道16号を行き交う車の音がどこか遠く、風の抜ける音だけが耳元をかすめていく。今日、私たちが挑んでいるのは、ただ枝を落とすだけの作業ではない。周囲の建屋や眼下の安全を完全に守り抜く「吊り下ろし作業」だ。
しかし、5日目の疲れが見え始めた頃、この現場最大の難所が牙を剥いた。切り落とした巨大な枝をロープで制御しながら降ろしていく際、枝が幹の途中に残る「切り株(枝の付け根)」に何度も引っかかってしまったのだ。ロープを緩めても、枝は切り株にがっちりと乗り上げ、下まで落ちてこない。無理に揺らせば、枝が予期せぬ方向へ跳ね、私を支えるメインロープや周囲の枝を傷つけるリスクがある。
25mもの高所で、自らの体を保持しながら、引っかかった枝を人力で揺さぶり、コブから外す。文字通り、木との一対一の格闘だ。地上でロープを操る相棒と声を掛け合い、「せーの!」の合図で力を合わせる。一度、二度……。枝がようやく切り株を滑り落ち、相棒の待つ安全地帯へと吸い込まれていく。この瞬間、全身を支配していた緊張が心地よい達成感へと変わる。
こうした「思うようにいかない瞬間」こそが、巨木を相手にする醍醐味であり、怖さでもある。図面やマニュアルにはない、現場の「生」の状況。切り株一つ、枝のしなり一つに神経を注ぎ、解決策を見出していく。2人という最小限のユニットだからこそ、この緊迫した格闘を共有し、乗り越えるたびにチームとしての強度が上がっていくのを感じる。5日間の集大成、登り作業の山場は、職人としての誇りを再確認させてくれる時間となった。

④目立て
25mと20mのカシ、そして20mの雑木。三本の巨木を相手に5日間戦い抜いてきたチェーンソーの刃は、目に見えない摩耗を繰り返し、その限界を迎えようとしていた。特にカシの木は「堅木(かたぎ)」の代表格。その強靭な繊維を断ち切るたびに、鋭利だった刃先は少しずつ丸まっていく。私は午後の最終仕上げを前に、防草シートの敷かれた庭の片隅で、静かにヤスリを手に取った。
丸ヤスリを一心不乱に滑らせる。目立ては、単なるメンテナンスではなく、自分自身の「技術」を刃先に転写する作業だ。カシの硬さに負けない力強い切れ味と、日曜日の静かな住宅街に配慮した「静かな切断音」を両立させるためには、0.1ミリ単位の角度調整が欠かせない。ヤスリが奏でる「シャッ、シャッ」という規則正しい音が、現場に心地よい緊張感をもたらす。
「良い仕事は、良い道具から」。これは「株式会社 樹」に受け継がれる鉄則だ。特に今日のように吊り下ろし作業で枝が切り株に引っかかるような場面では、一瞬の判断ミスが事故に繋がる。そんな時、自分の意図した通りに動いてくれる「研ぎ澄まされた刃」があることが、何よりの心の支えになる。
16号を走る車の音を遠くに聞きながら、指先で刃の返りを確認する。太陽の光を鋭く跳ね返す刃先を見て、ようやく納得のいく一息をついた。これで準備は整った。5日間の激闘を締めくくるための「最後の一太刀」に向けて、私は相棒と視線を合わせ、再び重厚なカシの幹へと歩み寄った。

⑤玉切り
高所から吊り降ろされた巨大なカシや雑木の枝が、次々と地上のキャンバスへと並べられていく。ここからは、搬出を円滑に進めるための「玉切り」作業が本格化する。5日間にわたる激闘を経て、庭の一角には切り出された枝葉が小山のようになっているが、我々2人の動きに淀みはない。
玉切りは、単に枝を短く切るだけの作業ではない。2トンダンプや軽トラという限られた積載スペースに対し、いかに隙間なく、かつ安全に積み込めるサイズにするか。枝の曲がりや太さを見極め、一本一本、瞬時に最適なカットラインを導き出す。カシの木特有の、ずっしりとした手応えをチェーンソー越しに感じながら、小気味よい音とともに枝を刻んでいく。
2人体制の現場では、一人が切り、もう一人が即座にそれを運び出すというサイクルが生命線だ。5日目ともなれば、言葉を交わさずとも相棒が次にどの枝を掴むかが手に取るようにわかる。切り株に引っかかるなどの難所を乗り越えてきた連帯感が、この地上作業でも遺憾なく発揮される。腕の筋肉には確かな疲労が蓄積しているが、研ぎ澄ましたばかりの刃が吸い込まれるように木を断ち切る感触が、私たちの背中を後押ししてくれる。
国道16号の向こう側に沈み始めた陽光が、切り出されたばかりの瑞々しい断面を照らし出す。この大量の「重み」を自分たちの手で一つひとつ整理していく過程こそ、巨木攻略のフィナーレに向けた大切なカウントダウンなのだ。

⑥集積
刻まれた枝葉が庭を埋め尽くしていく。ここからの「集積」作業は、単に一箇所にまとめる以上の意味を持つ。25m・20mのカシ、そして20mの雑木。三本の巨木から出た膨大な量の材を、いかに2トンダンプと軽トラへ効率よく積み込める形に整理するか。これが2人体制でのスピード感を左右する。
我々はまず、運びやすいように「枝葉」と、重量のある「幹」の玉切り材を明確に仕分けして集積した。幹材は肩に担いで運ぶため、ダンプの停車位置までの最短ルート上に配置。一方で、かさばる枝葉は、集草シートや人力で一気にまとめ上げ、積み込みの際に「隙間を埋めるクッション」として機能するように整理していく。5日間の作業で、庭のどの位置に何を集積すれば、最終的な搬出が最もスムーズになるかは、2人の頭の中に完全に描かれていた。
足元を埋め尽くしていた緑の山が、整然とした「資材」の山へと変わっていく。国道16号沿いという限られたスペースを最大限に活用し、施主様の生活動線や歩行者の安全を阻害しない配置を貫く。この「集積の美しさ」こそが、作業後半の疲労を軽減し、現場全体の安全を底上げする。自分たちが切り拓いた空の下、積み上がった材のボリュームを目の当たりにし、5日間の格闘の重みを改めて実感する瞬間でもあった。


⑦ゴミ出し
集積されたカシや雑木の山を、いよいよ現場から運び出す時が来た。本日用意したのは、2トンダンプと軽トラの2台体制。5日間で切り出された材の総量は凄まじく、これらすべてを人力で積み込んでいく作業は、この現場における最後にして最大の肉体労働だ。
重量のある幹の玉切り材は、2人で呼吸を合わせ、一本ずつ丁寧にダンプの底へと敷き詰めていく。その上に、かさばる枝葉を力一杯押し込み、積載効率を極限まで高めていく。国道16号という主要幹線を走るため、積み込みには細心の注意が必要だ。走行中に枝葉が飛散しないよう、コンパネ(囲い)を立て、最後はブルーシートで厳重に覆い、ロープでこれでもかというほど強固に固定する。
軽トラもフル活用だ。小回りの利く機動力を活かし、庭の奥まった場所に溜まった細かいゴミを効率よく回収していく。積み上がった荷台は、まさに5日間の格闘の歴史そのものだ。ダンプと軽トラがパンパンに膨れ上がり、シートを掛け終えたとき、あんなに足元を埋め尽くしていた材が消え、広々とした本来の庭が姿を現した。
16号を走る車の喧騒の中、満載になった2台の車両を見届ける。人力でこれだけの量を運び出したという事実は、我々2人の意地と結束の証でもある。重い材を肩に担ぎ、ダンプの荷台へと放り込むたびに感じたカシの重み。それは、巨木がこの地で生きてきた時間の重みでもあった。現場から「不要なもの」を全て連れ去り、施主様に「安全」と「余白」を届けるための、職人としての誇り高いラストスパートが完了した。


⑧作業後
17時。国道16号沿いを真っ赤に染めていた夕日が、静かに地平線へと沈んでいく。その残光の中で、私たちは5日間に及んだ激闘の終止符を打った。見上げれば、25mもの高さで空を覆い尽くしていたカシと雑木の枝葉はすっきりと整理され、そこにはかつてないほどの「広い空」が広がっている。3月の日曜日の夕暮れ、日進の街に、心地よい静寂と圧倒的な開放感が訪れた。
最後は2人で、庭の隅々まで徹底的に清掃を行う。5日間、木と格闘し、泥にまみれ、大量の材を運び出してきたこの場所。最後は箒とブロワーを使い、まるで何事もなかったかのように美しく整えるのが「株式会社 樹」の矜持だ。国道16号に面した外周も、歩行者の方々に迷惑がかからないよう、細心の注意を払って掃き清める。作業が終わった後の清々しい庭の姿こそが、施主様への最大の誠意だと私たちは信じている。
「本当にお疲れ様でした」 施主様からいただいたその言葉が、全身の疲れをスッと溶かしてくれた。25mという高所、16号沿いの交通量、そして枝が切り株に引っかかる難所……。決して平坦な5日間ではなかったが、2人の結束と技術、そして何より施主様の温かなご理解があったからこそ、無事故で完遂することができた。日曜日の夕刻、住宅街の明かりが灯り始める頃、私たちは見違えるほど明るくなった巨木たちを見上げ、深く一礼した。
5日間、私たちを受け入れてくれたカシの木とこの庭に感謝を込めて。切り拓かれた空の下、新しく通った風が、この家と街に豊かな春を運んできてくれることを願いながら。私たちは満載の荷台とともに、誇りを持って現場を後にした。


記入者: 株式会社 樹
現場: 埼玉県さいたま市日進個人宅(16号沿い)
人員: 2人
完了日: 2026/03/29(作業5日目・最終日)
成果: 25mカシ、20mカシ、20m雑木の剪定および搬出を全工程完遂。高所での吊り下ろし難所を技術で解決し、国道16号沿いの安全を最後まで死守。2台の車両を用いた人力搬出を含め、無事故・無災害で引き渡しを完了。



コメント