さいたま市日進・国道16号沿いの杜を整える。10本の雑木伐採に挑む職人の「速さと静寂」の1日。
- いつきスタッフ

- 1 日前
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①作業前
2026年3月24日、空は抜けるような快晴。我々「株式会社 樹」が降り立ったのは、さいたま市日進。国道16号がすぐ脇を走り、絶え間なく車の走行音が響く個人宅の現場だ。今日のミッションは、敷地内に生い茂った5mから10m級の雑木、計10本の伐採。春の芽吹きを前に、伸び放題となった枝葉を整理し、お庭に光を取り戻す。
現場に到着して最初に行うのは、機材の展開……ではなく、まずは「挨拶」だ。近隣の方々、そして施主様へ元気よく声をかける。我々の仕事は騒音や振動を伴う。だからこそ、作業前のコミュニケーション一つで、現場を取り巻く空気は大きく変わる。
「おはようございます!株式会社 樹です。本日よろしくお願いします」
現場は国道沿いということもあり、人通りや車通りも多い。三脚脚立を立てる位置、伐倒する方向、そして機材を置く場所。2人の職人が阿吽の呼吸で周囲を点検していく。8時まではエンジンをかけない。それが我々のマナーだ。静寂の中でチェンソーの燃料をチェックし、ヘルメットの顎紐を締め直す。
仰ぎ見れば、10本の雑木が春の光を遮るように立っている。10mの高さから見下ろす16号線の景色を想像しながら、指差呼称で安全を確認する。8時のチャイムと共に、この杜に「樹」の旋律を響かせる準備は整った。

②除伐
8時を告げるチャイムが国道16号の喧騒に溶け込むのと同時に、我々はチェーンソーに火を灯す。沈黙を守っていた庭先に、エンジン音が心地よいリズムで響き渡る。ここからは、時間と技術、そして安全との真剣勝負だ。目標は、5mから10m級の雑木10本。一筋縄ではいかない。
まずは、樹高10mに達する雑木の頂を攻める。我々の頼れる相棒、三脚脚立を安定した地面へ据え付ける。脚立の上での作業は、空中戦だ。国道沿いということもあり、一枝たりとも敷地外へ落とすことは許されない。我々は、落とす枝の重心を見極め、倒したい方向へ誘導するように、慎重に、かつ大胆に刃を入れていく。
「よし、まずは細いところからいくぞ!」
仲間と短く言葉を交わす。10mの高みから見下ろす国道16号は、いつもの散歩道とは違う緊張感に満ちている。車の走行音に紛れて、チェーンソーの鋭い刃が雑木の白い木身を削り取っていく。雑木特有の、瑞々しくも硬い繊維の手応えが腕に伝わってくる。
除伐が進むにつれ、庭先に鬱蒼としていた空間に、春の柔らかな光が筋となって差し込み始めた。地面を覆っていた雑多な影が整理され、本来あるべきお庭の清々しい輪郭が浮き彫りになっていく。作業中、常に意識しているのは「道路面の安全」だ。車や歩行者が近づくたびに合図を送り、安全を確認してから刃を入れる。この一連の動作の積み重ねこそが、我々が大切にする現場の流儀である。




③運搬集積
除伐が進み、地面が切り出された雑木の枝葉で埋め尽くされると、次なる戦いの幕が上がる。2トンダンプを満載にするための「運搬集積」だ。国道16号沿いのこの現場、大型重機を庭の奥まで乗り入れることはできない。結局のところ、最後に頼りになるのは職人の肩と腰、そして泥臭いまでの根性だ。
「よし、重い方からダンプへ放り込むぞ」
水分をたっぷりと含んだ10m級の雑木の幹は、一抱えもあるサイズで驚くほど重い。2人の職人が呼吸を合わせ、一歩一歩踏みしめるようにダンプへと運び込む。16号を走る車の走行音を背に受けながら、無心で重量物と向き合う。人力での積み込みは体力を激しく消耗するが、ここで手を抜けば後々の作業効率に響く。
2トンダンプの荷台という限られたスペースをいかに使い切るか。これもまた一つの技術だ。大きな幹を土台として安定させ、その隙間に細かな枝葉を詰め込んでいく。パズルのように隙間を埋めることで、10本分の雑木を確実に収めていく。
「これなら一回でいけるな」
積み上がる荷台を見て、相棒と視線を交わす。額から滴り落ちる汗が、作業の過酷さを物語っているが、同時に庭が目に見えてスッキリしていく光景は何物にも代えがたい達成感を与えてくれる。重機を使えば一瞬かもしれない。けれど、自らの手で重みを感じ、一段ずつ荷台を埋めていくプロセスにこそ、我々「株式会社 樹」の誇りが宿っている。



④目立て
午前の激しい伐採作業を終え、太陽が真上を通る頃、国道16号の喧騒を背に受けて「目立て」の儀式が始まる。10m級の雑木を次々と捌いてきたチェーンソーの刃は、一見鋭さを保っているように見えても、その実、硬い樹皮や木身との摩擦で微細な摩耗を繰り返している。我々にとって、この研ぎの時間は単なる休憩ではなく、午後の安全を左右する最も重要なプロセスだ。
「よし、研ぎ直すか」
地面に腰を下ろし、丸ヤスリを手に取る。一本一本の刃に対し、一定の角度と正確な力加減でヤスリを滑らせる。このとき、指先に伝わる微かな抵抗感だけが頼りだ。正しく研げた刃は、光を浴びて鈍く、しかし確かな鋭利さを湛えた銀色の輝きを取り戻す。切れ味の鈍った刃で無理に切り進めようとすれば、余計な力が入り、キックバックなどの重大な事故を招きかねない。
静かに、そして淡々と。ヤスリが刃を噛む「シャッ、シャッ」という規則正しい音が、自らの精神をも研ぎ澄ませていく。道具を愛し、その限界を引き出すための手入れを怠らない。この0.1mmを争うこだわりこそが、職人としての矜持であり、施主様の大切な資産であるお庭を、事故なく、美しく仕上げるための絶対条件だ。
エネルギーを補給し、目立てを終えた相棒に再び燃料を満たす。スターターロープを引けば、午前中よりも一層高く、鋭利なエンジン音が日進の空に響き渡る。研ぎ澄まされた刃と共に、我々は午後の残された任務、そして完璧な仕上げへと向かう。

⑤作業後
15時。国道16号の絶え間ない喧騒の向こう側で、さいたま市日進の静かな庭先に本日の「完了」が告げられた。朝、我々を圧倒するように立ちはだかっていた10本の雑木は、今や2トンダンプの荷台に整然と収まっている。見上げれば、遮るもののなくなった空から、春の柔らかな光が庭の隅々にまで降り注いでいた。
最後は、チェーンソーの切り屑一つ、小枝一本残さないための徹底した清掃だ。「現場に来る前よりも美しく」という我が社の信条を胸に、ブロワーと竹箒を使い分けて地面を掃き清める。この最後のひと手間こそが、我々が地域の方々、そして施主様へお返しできる最大の感謝の形だ。
「さっぱりしたね、ありがとう!」
作業を終える頃、様子を見に来られた施主様から頂いたその一言で、人力運搬で火照った体の疲れが心地よい達成感へと変わる。10m級の雑木を10本、国道沿いという難条件の中で無事故・無違反で完遂できた。それは、2人の職人が互いの背中を預け合い、妥協なき連携を貫いた証でもある。
ダンプのシートをきつく締め直し、現場を後にする。次はどの街の、どんな樹木が我々を待っているだろうか。15時半からは、この熱量を絶やさぬまま近隣への営業回りへと繰り出す。一本の木を伐り、一つの庭を整えることから始まる新たな縁を求めて、株式会社 樹は明日も走り続ける。

記入者: 株式会社 樹
現場: 埼玉県さいたま市日進(国道16号沿い個人宅)
人員: 2名
完了日: 2026/3/24
成果: 5m〜10mの雑木10本の伐採・搬出を完遂。国道沿いの難現場において、迅速かつ丁寧な作業により施主様のお庭に光を取り戻した。



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