八王子市鑓水・神社を囲む杜の再生9日目。ぬかるむ足元と格闘し、コナラと竹林を攻略する3人の連携
- いつきスタッフ

- 3 日前
- 読了時間: 6分

1. 作業前:長き戦いも佳境へ。静寂の中に響く準備の音
八王子市鑓水、和泉山の現場も今日で9日目を迎えた 。 (株)クレーベスト様のすぐ近く、これまで幾多の巨木と対峙してきたこの現場も、いよいよ仕上げの段階に入りつつある。 空は雲ひとつない快晴。だが、足元はこれまでの雨の影響か、ひどくぬかるんでいた。一歩踏み出すごとに重く粘る土が、作業の難航を予感させる。
朝8時。 私たちは現場に到着したが、すぐにチェーンソーを回すことはしない 。 近隣住民の方々への配慮、そしてこの場所が持つ静寂を乱さないよう、音出しは8時を過ぎてからと心に決めている 。 それが職人としてのマナーであり、信頼への第一歩だ。 3人のメンバーで今日の工程を最終確認し、各々のチェーンソーと登り道具に火を入れる前の静かな点検作業が続く。 ぬかるんだ地面、4本のコナラ、そして密集する竹林。 今日という一日に向けて、静かに、しかし確実に気合を注入していった。
2. 玉切り:ぬかるむ足元、チェーンソーの唸り。一刀に魂を込めて
伐倒したコナラの巨木が、湿った地面に横たわる。 次なる工程は「玉切り」。搬出のために一定の長さに切り分ける作業だが、今日の現場は一筋縄ではいかない。
昨晩からの湿気を含んだ土壌は、想像以上に私たちの自由を奪う。 踏ん張ろうとする足元がズブズブと沈み込み、踏ん張りが効かない。 チェーンソーを握る腕にいつも以上の力が入り、一瞬の油断も許されない。 ここで足を取られれば、刃先が狂い、大事故に繋がりかねないからだ。
「よし、いくぞ」
自分に言い聞かせ、エンジンの回転数を上げる。 鋭い音とともにコナラの硬い樹皮に刃が食い込んでいく。 木屑が舞い、独特の香りが周囲に広がる。 一本、また一本と適切なサイズに切り分けていくが、ぬかるんだ斜面での作業は体力をじわじわと削っていく。 それでも、3人の連携を絶やさず、声を掛け合いながら作業を進めた。 この悪条件下で、いかに正確に、そして安全に「玉」を作るか。 職人としての意地が、チェーンソーの唸りとなって現場に響き渡っていた。


3. 運搬作業:泥濘との死闘。人力集積に込める執念
玉切りを終えた後は、この現場最大の難所とも言える「運搬作業」が待っていた。 重機が入れないこの斜面では、伐採したコナラの幹も、無数に広がる枝葉も、すべて自分たちの腕と足だけで集積場所まで運ばなければならない。
追い打ちをかけるのは、やはりこの地面だ。 見た目以上に深くぬかるんだ土は、丸太を担いだ瞬間にズブりと長靴を飲み込む。 一歩踏み出すたびに、足裏から体力を奪われていくような感覚。
「おっと……!」
枝を抱えて移動中、不意に足元を取られ、バランスを崩しそうになる。 泥に足を取られながらも、なんとか踏みとどまる。ここで転倒すれば、抱えた枝で怪我をするだけでなく、作業のリズムも狂ってしまう。
「焦るな、一歩ずつ確実に!」
互いに声を掛け合い、泥にまみれながら斜面を往復する。 軽バンが待つ集積ポイントまで、人力で一つひとつ積み上げていく作業。 効率だけを考えれば気が遠くなるような量だが、一枝一枝を丁寧に片付けていくことで、ようやく現場に「道」が見えてくる。 泥だらけになった作業着は、今日この場所で私たちが全力で立ち向かった証だ。



4. 除伐:竹林の迷宮に挑む。40本の静かなる制圧
コナラの処理と並行して進めたのが、斜面に密集する竹林の「除伐」だ。 その数、およそ40本。 竹は樹木とは違い、一本一本は細いが、その分しなりが強く、倒れる方向の予測が難しい。おまけに足元は相変わらずのぬかるみだ。一歩間違えれば、跳ね返った竹が体に叩きつけられるリスクがある。
チェーンソーを竹の節に当て、慎重に切り込みを入れる。 パキッという乾いた音とともに、竹がゆっくりと傾いていく。密集地での作業は、倒した竹が他の竹に引っかかる「掛かり木」の状態になりやすく、それを一つひとつ手際よく外していくのにも技術と体力が求められる。
40本という数字は、文字で書けば一瞬だが、現場では果てしない。 切り倒しては運び、また次の竹へ。 視界を遮っていた竹林が、一本、また一本と消えていくにつれ、現場に少しずつ光が差し込み始める。 この「除伐」こそが、荒れた山を再生させ、次の世代へ繋ぐための大切な工程。 泥にまみれ、竹の粉塵を浴びながらも、私たちは休むことなく手を動かし続けた。

5. 目立て:研ぎ澄まされる刃、研ぎ澄まされる集中力
激しい伐採と玉切りの連続で、チェーンソーの刃は確実にその鋭さを失っていく。 特に、今日のようなどろどろにぬかるんだ現場では、木に付着した泥や砂が刃を痛めるスピードを早める。 切れ味の落ちた刃で無理に切り進めることは、作業効率を下げるだけでなく、キックバックなどの思わぬ事故を招く引き金になる。
作業の合間。私は喧騒を離れ、一人地面に腰を下ろした。 手にするのは一本の丸ヤスリ。 使い込んだ愛機の刃、一つひとつにヤスリを当て、一定の角度、一定の力加減で引いていく。 「シュッ、シュッ」という規則的な金属音だけが、静かになった現場に響く。
この「目立て」の時間は、単なる道具の手入れではない。 摩耗した刃を蘇らせると同時に、高ぶった神経を落ち着かせ、次の作業への集中力を研ぎ澄ます儀式のようなものだ。 指先で刃の返りを確認し、納得がいくまで繰り返す。 黄金色に輝く新しい刃先が顔を出したとき、再びこの相棒とともに戦う準備が整う。 道具を信じ、自分の技術を信じる。 そのための大切なひとときだ。

6. 作業後:開かれた視界。泥にまみれた9日間の結実
17時。太陽が西に傾き、和泉山の現場に長い影が伸びる頃、私たちはすべての道具を軽バンに積み込んだ。
見上げれば、朝方まで視界を遮っていたコナラや密集した竹林はもうない。 残ったのは、丁寧に集積された丸太と枝葉、そして職人たちが足掻いた跡が残る、少しボコボコとした地面だけだ。 ぬかるみに足を取られ、体力の限界を何度も迎えそうになったが、3人で声を掛け合い、一歩ずつ進めてきたこの9日間。 終わってみれば、その過酷ささえも、この「開かれた景色」を作るための必要なプロセスだったと感じる。
現場を離れる前、もう一度全体を見渡す。 切り株の切り口は美しく、周囲にゴミ一つ残っていない。 これが私たちの仕事だ。 ただ切るだけではない。その場所が本来持っている姿を取り戻し、安全な空間として次へ繋ぐこと。
泥だらけになった長靴を脱ぎ、心地よい疲労感とともに現場を後にする。 明日には、また別の場所で、別の木々が私たちを待っている。 職人の朝は早い。 今日の勝利を胸に、私たちは次なる戦地へと向かう準備を始める。

記入者: 株式会社 樹
現場: 東京都八王子市鑓水和泉山
人員: 3人
完了日: 2026/03/09
成果: コナラ4本・雑木4本の伐倒、および竹40本の伐採を完了。ぬかるんだ悪条件下においても、人力による正確な集積作業を完遂した。



コメント