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東京都瑞穂町・国道16号沿い伐採プロジェクト:2日目。ナラと桜の巨木に挑む、4人の職人と重機の総力戦

  • 執筆者の写真: いつきスタッフ
    いつきスタッフ
  • 1 日前
  • 読了時間: 9分

①国道16号の喧騒と、静かに佇む「ナラの壁」


2026年2月20日。昨日からの作業を引き継ぎ、私たちは東京都西多摩郡瑞穂町高根の現場に立っていました。今回の舞台は、大型トラックや乗用車が絶え間なく行き交う「国道16号」に直接面した、非常に緊張感のあるエリアです。

朝8時、現場に到着して改めて見上げると、そこには空を突き刺すように枝を広げた巨木たちが待ち構えていました。本日のターゲットは、樹高15〜20メートルにも達する「ナラの木」が約15本、そして立派な「桜の木」が2本。さらにその足元を埋め尽くすように、昨日の作業では手付かずだった雑木が各所に生い茂っています。

冬場とはいえ、これだけの本数が密集すると、まるで巨大な「緑の要塞」のように国道沿いの視界を遮っています。特に、国道16号沿いという立地は、歩行者の安全確保や走行車への飛散防止など、一瞬たりとも気が抜けない環境です。

4人の精鋭スタッフによる、17時までの長い戦いがここから始まります。現場の難易度は、事前の見立てでは「中」としていましたが、実際に木の下に立ってみると、ナラの幹に太いツルが幾重にも、執拗に絡みついているのが分かります。このツルが登攀(とうはん)を阻み、伐倒のバランスを狂わせる「厄介な伏兵」となることは、プロの目には明らかでした。

軽バンから降ろされた3台のチェーンソーが、冷たく乾いた空気を震わせるエンジン音を響かせます。歩行者の列が途切れるのを確認し、周囲に細心の注意を払いながら、私たちは今日最初の一太刀を入れる準備を整えました。瑞穂町の空をより広く、より安全にするための2日目のミッションが、今、静かに幕を開けます。



作業前
作業前





②枝落とし:国道16号を背に、空中の「伏兵」と格闘する


早速樹上での作業が始まります。今回のターゲットは、樹高15〜20メートルに達するナラの巨木群。クライマーは専用のギアを身にまとい、重力を味方につけながら垂直に近い幹をスルスルと登っていきます。

しかし、登攀を開始してすぐに、今回の現場特有の「難易度」が牙を剥きました。昨日から懸念していた「ツル」の存在です。 遠目には細く見えるツルも、樹上で対峙すれば腕ほどもある太さ。これがナラの枝に複雑に絡みつき、まるで天然の網のように行く手を阻みます。ツルを一本切るごとに、予期せぬ方向から枝が跳ねたり、チェーンソーの刃がツルの繊維に噛み込んだりと、作業のテンポが大きく削がれます。

さらに、ここは「国道16号」のすぐ脇です。 枝を一本落とすにしても、道路側に張り出した部分は特に慎重さが求められます。走行する大型車両や歩行者の列を眼下に見ながら、落下の衝撃で破片がガードレールを越えないよう、ザイル(ロープ)で吊り切りを行う「リギング」を多用します。


「右、クリア!」「よし、落とすぞ!」


地上スタッフとの鋭いコールアンドレスポンスが飛び交います。ツルに絡まった枝は、切り離してもすぐには落ちてきません。無理に引っ張れば、ツルに引っ張られた別の枝が思わぬ動きをすることもあります。まさに知恵の輪を解くような、緻密で粘り強い作業。4人のスタッフがそれぞれの持ち場で、この「空中の伏兵」を一本ずつ攻略していく姿は、まさにプロの仕事そのものでした。



枝落とし
枝落とし

③昼食:国道沿いの喧騒を離れ、丸太の上で味わう「至福のエネルギー」


午前中、樹高20メートル近いナラの巨木と、執拗に絡みつくツルを相手に格闘を続けた4人の職人たち。12時の合図とともに、現場には束の間の静寂が訪れます。国道16号を絶え間なく行き交う車の音をBGMに、私たちは思い思いの場所で腰を下ろし、昼食の時間を取りました。

今回の「現場飯」の主役は、丸太を椅子にしたワイルドなスタイルです。写真(S__12877860.jpg)にある通り、切り出したばかりのナラの丸太に腰掛け、仲間と肩を並べて食べるお弁当は、どんなレストランの食事よりも贅沢に感じられます。メニューは、最寄りのコンビニで調達した勝負飯。エネルギーを即座に補給できる「おにぎり」や「サラダ巻き」など、午後の重労働に備えた力強いラインナップが並びます。

「今日のナラは、ツルが邪魔で思うように刃が入らなくて苦労するよ」 「午後の伐倒、国道側の安全確認は俺が重点的に見るから任せてくれ」

そんな会話を楽しみながら、温かい食事を口に運びます。狭い車内ではなく、瑞穂町の広い空の下で、自分たちが切り拓いたばかりの景色を眺めながら過ごすこの時間は、単なる栄養補給以上の意味を持ちます。4人のスタッフが同じ目線で語り合い、午前中のヒヤリとした場面や成功したポイントを共有することで、チームの結束力と安全意識が再び高まっていくのです。

しっかりとした食事と短い仮眠で体力を回復させ、13時。私たちの身体には、午後のメインイベントである「伐倒作業」へと向かうための新たな活力が満ちていました。



昼食中
昼食中

④伐倒作業:国道沿いの緊張と、予期せぬ「折損」の恐怖


昼食を終え、いよいよ本日の核心部である伐倒作業が始まりました。今回のターゲットは国道16号に面した樹高15〜20メートルのナラ15本と桜2本です。この規模の巨木を国道沿いで倒す場合、道路側への倒伏は絶対に許されず、わずかな計算ミスが甚大な被害に直結します。

私たちは、作業効率と安全性を高めるためにコンマ0.25ユンボ(バックホウ)を投入しました。チェーンソーで正確に「受け口」と「追い口」を作り、ユンボの強力なパワーで計画した方向へ牽引しながら倒す——という、私たちの得意とする人力と重機の連携プレーです。

しかし、ここで今回の現場最大の「想定外」が起こりました。 ユンボで一定のテンションをかけ、安全な方向へ木を導こうとしたその瞬間、ナラの巨木が予想だにしない箇所で「ポッキリ」と折れてしまったのです。

「危ない!」現場に鋭い声が響きます。 通常、木は根元から倒れるものですが、今回の木は内部の腐朽か、あるいは長年絡みついていた大量の「ツル」による負荷のせいか、幹の中ほどから破断しました。折れた上部が予期せぬ方向へ跳ねる、特殊伐採における極めて危険な瞬間でした。スタッフの冷静な判断と瞬時の回避行動、そしてユンボの操作技術により、幸いにも大きな事故には至りませんでしたが、全員の背中に冷や汗が流れたことは間違いありません。

国道16号を走る車のドライバーからは見えない、フェンス一枚隔てた内側の死闘。私たちは改めて、木が幾重にも絡まったツルに依存して立っている不安定さや、見えない内部の劣化という自然の不確実さを再認識しました。その後、残りの木々に対してはさらに慎重を期し、一歩一歩踏みしめるように伐倒を継続。4人のチームワークによって、一本、また一本と、空を覆っていたナラの壁を、確実かつ安全に大地へと下ろしていきました。



伐倒作業
伐倒作業

⑤玉切り:巨木を「材」へと変える、精緻な断裁と集積の技


無事に伐倒を終えたナラや桜の巨木たちは、そのままではただの巨大な障害物です。これらを運び出し可能な「材」へと変えていくのが、この玉切り作業です。

スタッフは横たわった幹に対して、次々とチェーンソーを入れていきます。今回の搬出プランに合わせ、材は正確に「2メートル」の長さに切り揃えられていきます。一見、単純な切断作業に見えますが、地面に接している丸太を切る際は、刃が土を噛んで切れ味が落ちないよう、極限まで慎重な操作が求められます。また、重なり合った材には複雑な荷重(テンション)がかかっており、切り離した瞬間に丸太が跳ねたり転がったりする危険があるため、切り進める順番にも熟練の判断が必要です。

さらに、枝葉の処理も同時進行で行われます。細かな枝は熊手や手作業で集め、コンマ0.25ユンボのフォークで力強く、かつスピーディーに一箇所へと集約していきます。

この作業中、国道16号側の歩道には、作業を見守っていた隣地の地主さんが顔を出されました。「その木を少し分けてもらえないか」というお声がけに、私たちは快く応じました。こうした地域の方々との何気ない交流も、現場に温かな空気をもたらしてくれます。

夕刻が近づくにつれ、あちこちに散乱していた枝葉は整理され、切り出された丸太は美しい山となって集積されていきました。4人のスタッフによる阿吽の呼吸と重機のパワーが融合し、荒々しかった「伐採現場」が、次のステップである搬出を待つ「整えられた空間」へと姿を変えていきました。



玉切り
玉切り


⑥明日のための「目立て」:終業の静寂に響く、次への備え


17時。瑞穂町の空がオレンジ色から深い藍色へと溶け込み始める頃、本日の実作業が終了しました。しかし、4人の職人にとって、これで一日のすべてが終わったわけではありません。軽バンへ道具を片付ける前に、私たちが最後に行う重要なプロセスが、明日に向けた「目立て」です。

国道を走る車のヘッドライトが周囲を照らし始める中、私たちは再びヤスリを手に取ります。今日一日、硬いナラの巨木や執拗に絡みつくツルと戦い続けたチェーンソーの刃は、目には見えなくても確実に摩耗しています。

「お疲れ様。今日の最後の一本、だいぶ刃が食われちゃったな」 「明日もまた国道沿いの緊張する作業が続くから、今ここで完璧に戻しておこう」

そんな言葉を交わしながら、一振り一振り、丁寧に刃の角度を整えていきます。目立ては、一日の作業を振り返り、自らの安全意識を再確認するための「心の整理」の時間でもあります。 明日の3日目も、15メートルを超える巨木を相手にする過酷な現場が待っています。万全の状態に研ぎ澄まされた3台のチェーンソーを軽バンに積み込み、私たちは明日への確かな手応えとともに、瑞穂町高根の現場を後にしました。



目立て
目立て

⑦国道16号に差し込む「新しい光」と、地域に根ざす職人の誇り


夕暮れ時、瑞穂町の空が深い黄金色に染まり始める頃、私たちは全ての作業機材の手入れを終え、最後にもう一度、自分たちが切り拓いた景色を眺めました。

2日前には国道沿いの視界を完全に遮っていた「ナラの壁」は姿を消し、そこには驚くほど広大で、清々しい空間が広がっています。15〜20メートル級の巨木15本と桜2本、そして各所に蔓延っていた雑木たちが整理されたことで、瑞穂町の街並みが今まで見たこともないほど遠くまで見渡せるようになりました。

今回の現場は、国道16号という主要幹線道路に面していたため、一瞬の油断も許されない環境でした。特にユンボでの牽引中に木が折れるといった不測の事態や、幾重にも絡みつく「ツル」との格闘など、難易度「中」以上の緊張感が常に現場を支配していました。しかし、4人のスタッフが阿吽の呼吸でそれぞれの役割を全うし、無事故・無違反でこの景色を作り上げたことは、私たちの大きな自信となりました。

作業中、隣地の地主様から「木を少し分けてほしい」と声をかけていただいたエピソードは、この仕事が単なる「破壊」ではなく、地域の方々の生活や想いに寄り添う「創造」の一部であることを再確認させてくれました。お裾分けしたナラの木が、また別の場所で誰かの役に立つ。それは、伐採という仕事を通じて私たちが大切にしたい「繋がり」の形でもあります。

国道を走る車のヘッドライトが、整えられた集積場を明るく照らし始めます。 瑞穂町の新しい風景に、明日からまた心地よい風が吹き抜けることでしょう。私たちは、この街の「緑の守り手」としての誇りを胸に、相棒の軽バンとともに現場を後にしました。



作業後風景
作業後風景

記入者: 株式会社 樹スタッフ

現場: 東京都西多摩郡瑞穂町高根(国道16号沿い)

人員: 4名

作業日: 2026年2月20日(金曜日)

成果: ナラ15本、桜2本、各所除伐および現地集積完了

 
 
 

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