東京都瑞穂町・国道16号沿い伐採プロジェクト:6日目。雨中の決戦と、40立米の巨材を運び出す「搬出」の儀。
- いつきスタッフ

- 2 日前
- 読了時間: 7分
①作業前:雨に濡れる国道16号と、沈黙する巨木の山
2026年2月25日、水曜日。現場に到着した私たちの目に飛び込んできたのは、昨日までとは全く異なる、しっとりと濡れた瑞穂町の風景でした。空は一面の灰色の雲に覆われ、冷たい雨が絶え間なく降り注いでいます。国道16号を行き交う車たちもヘッドライトを点灯させ、跳ね上げる水しぶきがこの天候の厳しさを物語っていました。
まず、作業開始前の現場の様子を思い浮かべてみてください。背後にそびえ立つ物流倉庫の白い壁面は、雨に濡れて鈍い光を放ち、霧がかった空気に溶け込んでいます。その手前には、5日間かけて私たちが大地へと下ろし、丹念に切り揃えてきたナラの巨木たちが、静かにその出番を待っていました。
地面に目を向けると、連日の重機稼働と今日の雨により、地盤は緩み、独特の粘り気を持った泥土へと変化しています。
「今日は足元がかなり悪いな。一歩一歩、確実に踏みしめていこう」
「大型車が入ってくるから、誘導はいつも以上に慎重に。滑りやすいから無理は禁物だ」
スタッフ2人は、雨粒が滴るヘルメットの下で、短くも重要な意思疎通を図ります。本日は少人数精鋭の2名体制。しかし、課せられた任務は極めて重大です。ナラの木約30本分の抜根、そして発生した枝・幹・根っこを現地で集積し、大型車両2台、実に合計40立米(りゅうべ)という膨大な量を搬出する——。
雨の日は視界が悪くなるだけでなく、足元のグリップが効かなくなるため、難易度は実質的に「中」を超え、一瞬の油断が大きな事故に直結します。特に国道沿いのフェンス際やガードレール付近での作業は、泥に足を取られて転倒すれば、走行車両との接触という最悪の事態も考えられます。私たちはカラーコーンを増設し、安全区画をより強固に構築することで、自分たちと周囲の安全を二重、三重に守る体制を整えました。
相棒の軽バンから、雨に濡れないよう慎重に資材を運び出し、防護服の上からレインウェアを羽織る職人たち。雨音の中に、遠くから大型ヒアブ車のエンジン音が近づいてくるのが聞こえます。
瑞穂町の新しい景色を作るために積み上げてきたこの「材」を、いよいよ次なる場所へと送り出す。雨に打たれ、泥にまみれる覚悟を決めた私たちの、長く熱い一日の幕が上がりました。


②作業中:降りしきる雨と泥濘(ぬかるみ)の試練、重機と職人の阿吽の呼吸
午前中の作業が本格化するにつれ、降り続く雨が現場の表情を刻々と変えていきました。連日の作業で踏み固められていた大地は、水分を含んで深い泥濘(ぬかるみ)へと姿を変え、私たちの足元を執拗に奪おうとします。
「足元、相当取られるぞ。ユンボの旋回軌道には絶対に入るなよ!」
雨音に負けない鋭い声が飛び交います。今回、想定外だったのはこの地盤の緩みです。普段なら難なくこなせる移動や踏ん張りも、泥に足を取られることで倍以上の体力を消耗します。しかし、今日中に「大型2台分・40立米」という膨大な量を送り出すためには、立ち止まっている暇はありません。
現場では、約30本分の抜根作業が並行して進められました。コンマ0.25ユンボが唸りを上げ、地中に深く指をかけるようにして、巨大な根株を泥ごと抉り出していきます。雨に濡れた土は重く、バケットにかかる負荷も通常時とは比較になりません。オペレーターは、ユンボが泥に足を取られてバランスを崩さないよう、履帯の接地状況をミリ単位で感じ取りながら、慎重かつ大胆にレバーを操ります。
地上では、切り出された幹の長さを揃える「玉切り」の最終調整が行われています。私たちのこだわりである「幹の長さを揃える」というマナーは、単なる美学ではありません。この後の大型搬出において、ヒアブ車が材を掴みやすくし、荷台の隙間を最小限に抑えて積載効率を最大化するための、実利に基づいたプロの技術です。雨で視界が遮られる中、チェーンソーの刃を正確に当て、一定の規格で材を切り出していく作業は、まさに精神力の限界に挑むものでした。
抉り出されたばかりの泥だらけの根、一定の長さに切り揃えられたナラの幹、そして細かく裁断された枝葉。これらが雨に打たれながらも、現場の一角に整然と積み上げられていく光景は、過酷な環境に屈しない人間の意志の強さを象徴しているかのようでした。
泥にまみれ、雨に打たれながらも、私たちの手は止まりません。すべては、この後に控える大型ヒアブ車との「搬出という共同作業」を完璧なものにするために。瑞穂町の空の下、雨音とエンジン音だけが響く静かな激闘が続いていました。


③大型2台搬出:雨を切り裂くクレーンの咆哮と、40立米の重量感
午後、雨に濡れた国道16号の路面に大きな影を落として、待望の「大型ヒアブ車」が現場に滑り込んできました。この車両は強力なクレーンを備えており、山積みにされた巨大な材を一気に積み込むことができる搬出の主役です。今回の目標は、2台合計で40立米という膨大な物量を完遂すること。
作業が始まると、現場の空気はさらに一段階、引き締まりました。ヒアブ車のクレーンアームが、雨を切り裂くようにして枝葉の山へと伸びていきます。鋭い爪(グラップル)が、私たちがこれまで格闘してきたナラの幹や、複雑に絡み合った巨大な根株を力強く掴み取ります。宙を舞う巨大な材の重量感は圧倒的で、クレーンが動くたびに、重量に抗う油圧の唸り声が現場に響き渡ります。
ここで真価を発揮したのが、午前中から徹底してきた「幹の長さを揃える」というこだわりです。美しく玉切りされたナラの丸太は、クレーンで掴みやすく、荷台の限られたスペースに隙間なくパズルのように収まっていきます。もし長さがバラバラであれば、40立米という目標値を達成することは不可能だったでしょう。マナーとしてのこだわりが、そのまま「搬出効率」という実利に直結した瞬間でした。
雨天による地盤の緩みは、この積み込み作業においても最大の懸念事項でした。大型車がその重量で泥に沈み込まないよう、慎重に停車位置を誘導し、2名のスタッフは泥にまみれながらも、クレーンの死角に入らないよう鋭い合図を送り続けます。
1台目の荷台がナラの幹と枝で溢れんばかりに満たされ、2台目もまた、掘り起こされた巨大な根株たちによって埋め尽くされていきます。雨に濡れた黒い材が荷台に積み重なっていく様子は、まさに6日間にわたる私たちの激闘の証。最後の一掴みが積み込まれ、大型車がゆっくりと国道16号へと走り出したとき、現場にはそれまであった巨大な圧迫感が消え、瑞穂町の広い空がさらにその輪郭を鮮明にしていました。


④作業後:雨に洗われた瑞穂の大地と、40立米の誇りを胸に
17時。瑞穂町の空を覆っていた分厚い雨雲は、作業の完了を待っていたかのように、その色を一層深く落としていきました。本日、雨天という悪条件下、精鋭2名体制で挑んだプロジェクト6日目。私たちは、積み上げられた約30本分の枝、幹、そして巨大な根っこを、大型車両2台、合計40立米という圧倒的なボリュームでこの場所から送り出すことに成功しました。
最後の一枚となる現場の風景を思い浮かべてみてください。そこには、作業開始前のような鬱蒼とした圧迫感は微塵もありません。物流倉庫の白い壁面を背景に、私たちが執念で抉り出し、平坦に整えた広大な大地が広がっています。大型ヒアブ車がその重量感とともに走り去った後の轍は、雨に濡れて黒々と光り、この一日の激闘の凄まじさを物語っています。
「雨で地盤が緩んで、一時はどうなるかと思ったが……」
スタッフが漏らしたその言葉には、安堵と、プロとしての誇りが入り混じっていました。今回の作業で最大の誤算だったのは、雨による地盤の軟弱化です。一歩足を踏み出すごとに泥に取られ、重機のバランスを保つだけでも細心の注意を要した極限の状態。しかし、私たちはその「想定外」を、培ってきた技術と経験でねじ伏せました。
特にこだわった「幹の長さを揃える」というマナー。それが大型車両の荷台を隙間なく埋め尽くし、40立米という目標値を完璧に達成させた光景を目にしたとき、私たちの選択が間違っていなかったことを確信しました。国道を行き交う人々から見れば、それは単なる搬出の一風景かもしれません。しかし、私たちにとっては、雨という自然の洗礼を受けながら、マナーと効率を両立させた「職人の矜持」の証明でもあったのです。
現場を去る際、改めて整えられた大地を見つめ直しました。雨に洗われ、浄化されたかのようなその空間は、明日から始まる次なるステップを待ちわびているようでした。相棒の軽バンに泥だらけの機材を積み込み、私たちは充実感とともにこの場所を後にしました。
東京都瑞穂町高根、国道16号プロジェクト。雨の中の40立米搬出という大きな節目を越え、私たちの旅はさらに高い完成度を目指して続いていきます。
記入者: 株式会社 樹
現場: 東京都西多摩郡瑞穂町高根(国道16号沿い)
人員: 2名
完了日: 2026年2月25日(水曜日)
成果: 大型2台分(約40立米)搬出完了、約30本分の抜根・集積・整地完了、無事故完了



コメント