東京都瑞穂町・国道16号沿い伐採プロジェクト:7日目。雨上がりのナラ25本伐倒と、国道を汚さない「職人の誇り」。
- いつきスタッフ

- 1 日前
- 読了時間: 24分

①作業前:雨上がりの静寂と、霧に煙る物流倉庫の巨大な壁面
2026年2月26日、木曜日。現場に到着したとき、瑞穂町の空は昨日の雨の名残を留めた重い雲に覆われていました。天気予報は「雨のち曇り」。朝のうちはまだ霧雨が舞い、冷たい空気が肌を刺すような厳しいコンディションでのスタートとなりました。
まず、作業開始前の現場の風景を思い浮かべてみてください。背後にそびえ立つ巨大な物流倉庫「ロジポート」の白い壁面は、霧に煙り、いつも以上の圧倒的な存在感で現場を見下ろしています。その手前には、これまでの6日間で私たちが大地へと下ろしきれなかった、ナラの巨木たちが最後の防壁のように立ちはだかっていました。
地面に目を向けると、昨日の雨をたっぷりと吸い込んだ土壌は、深い泥濘(ぬかるみ)へと姿を変えています。重機を走らせれば足元が取られ、一歩歩くごとに泥が長靴にまとわりつく、体力的にも精神力的にもタフさが求められる環境です。
「今日は足元がかなり悪いな。地盤が緩んでいるから、重機の転倒や倒木の軌道にはいつも以上に神経を使おう」
「国道を汚さないのが今日の最優先マナーだ。泥を道路に引きずり出さないよう、徹底していこう」
スタッフ3人は、雨に濡れるレインウェアの下で、短くも重要な意思疎通を図ります。本日のミッションは、樹高15〜20メートル級のナラ25本の伐倒、そして10本の抜根、さらには発生した膨大な材の大型搬出まで。一瞬の油断も許されない、濃密なスケジュールが組まれています。
安全対策についても、3名体制という利点を活かし、より強固な布陣を敷きました。一人が国道側の交通監視に立ち、一人が重機のオペレーション、そして一人が地上の安全確認と伐倒補助。国道16号を行き交う車たち、そして歩道を歩く人々。彼らの日常を脅かすことなく、いかに迅速に、かつ美しく作業を完遂するか。
相棒の軽バンから、入念にメンテナンスされたチェーンソーを降ろす金属音。そして、現場を力強くサポートするコンマ0.25ユンボのエンジン音が、瑞穂町の湿った朝の空気に力強く響き始めます。
瑞穂町の空を、もっと広く。そして、この土地を次なるステップへと引き渡すために。雨上がりの泥濘をものともせず、完璧な仕上げを目指す私たちの「7日目」の戦いが、今再び幕を開けました。
②ユンボ伐倒作業中:重機とチェーンソーが織りなす「静」と「動」の連携
朝の冷たい霧雨が残る中、現場にはコンマ0.25ユンボの重厚なエンジン音が響き渡ります。本日の伐倒対象は25本。これほどの本数を、限られたスペースと時間の中で安全に処理するためには、人力だけの伐採ではなく、重機を有効に活用した「重機併用伐倒」が不可欠です。
作業は、チェーンソーによる正確な「受け口」の作成から始まります。国道16号という交通の要所に隣接しているため、倒す方向の狂いは一ミリたりとも許されません。職人が慎重に幹に刃を入れ、理想的な倒伏軌道を定めた後、真打ちであるユンボが登場します。
ユンボのオペレーターは、長いアームを器用に操り、巨木の高い位置にそっとバケットを添えます。これは単に力任せに押し倒すためではなく、木の重心をコントロールし、予定外の方向へ裂けたり跳ねたりするのを防ぐための「支え」の役割を果たします。
「よし、そのままキープ!追い口入れるぞ!」
地上スタッフの合図とともに、チェーンソーが唸りを上げます。追い口が深く入るにつれ、自重とユンボによる絶妙なテンションによって、ナラの巨躯がみしみしと音を立て始めます。この瞬間、現場には言葉にできない緊張感が走ります。ユンボがゆっくりと、しかし確実な力で木を押し出すと、20メートル近いナラが空を切り、狙い通りの安全地帯へと地響きとともに横たわりました。
この「重機併用」の最大の利点は、風の影響や木の偏心を封じ込め、安全性を飛躍的に高められる点にあります。また、倒した直後にユンボが材を掴んで移動させることで、後続の玉切り作業へ流れるような連携が可能となります。
雨上がりの泥濘に足を取られがちな足場環境においても、キャタピラによる安定した踏ん張りが利くユンボは、私たちの最強のパートナーでした。一本、また一本と、瑞穂町のスカイラインを塞いでいたナラの壁が、プロの連携によって安全に大地へと下ろされていきました。

③玉切り作業:木が語る「重心」の罠と、九死に一生を得た瞬間
ユンボによって安全な作業スペースへと横たえられたナラの巨木。次なる工程である大型搬出を円滑に進めるためには、これらを2メートル前後の一定の長さに切り揃える「玉切り」が不可欠です。しかし、地面に横たわったからといって油断は禁物です。むしろ、ここからが真の緊張感の始まりでもありました。
作業員は、チェーンソーを構え、一本一本の幹の接地状態を鋭く観察します。ナラの木は真っ直ぐなものばかりではありません。複雑に曲がった幹、そして地表のわずかな起伏が、材の中に強力な「テンション(荷重)」を蓄積させています。不用意に刃を入れれば、切り離した瞬間に材が予期せぬ方向へ跳ね、作業員の身体を直撃しかねません。
ここで、本日の作業中に起きた「想定外の事態」について記録しておきます。 一見、安定して地面に鎮座しているように見えた太い幹を玉切りしていた際のことです。最後の一太刀を入れ、材が切り離された瞬間、接地面の傾斜と材自体の偏重心が重なり、切り出した丸太が突如として自分の方へ向かって転がり始めたのです。
「危ない!下がれ!」
仲間の鋭い叫び声と同時に、反射的に飛び退いたことで事なきを得ましたが、一歩遅ければ足元を直撃していたであろう、肝を冷やす瞬間でした。雨上がりの泥濘(ぬかるみ)で足元が不安定だったことも、回避行動を難しくさせる要因の一つでした。
「どんなに横たわっていても、木は生きている。最後まで気を抜くな」
スタッフ全員でこのヒヤリハットを即座に共有し、以降の作業では、転がりの予測をより厳密に行い、必要に応じてユンボで材を押さえながら切断する徹底した安全策を講じました。
私たちのこだわりである「幹の長さを揃える」というマナーを完遂するためには、こうした一歩間違えれば重大事故に繋がるリスクと、常に隣り合わせであることを再確認したセクションとなりました。冷たい空気の中、再びチェーンソーが唸りを上げ、瑞穂町の現場には正確に切り揃えられたナラの丸太が、規律正しく積み上げられていきました。

④大型搬出作業中:空を舞う巨材と、雨上がりの「効率」を支える積み込み技術
午前中の激しい伐倒作業によって生み出された膨大な「材」を、いつまでも現場に留めておくわけにはいきません。限られた作業スペースを確保し、円滑にプロジェクトを進めるため、私たちは大型ヒアブ車を導入した大規模な搬出作業を開始しました。
現場に到着した大型車両の威容は圧倒的です。強力なクレーン(ヒアブ)を備えたその車両が、私たちが山積みにした枝葉や幹の山へと力強くアームを伸ばしていきます。クレーンの先端にある巨大な爪(グラップル)が、何百キロもあるナラの巨材を一度に掴み取り、軽々と宙へと持ち上げる光景は、まさに圧巻の一言に尽きます。
ここで、午前中の「玉切り」の精度が大きな意味を持ち始めます。一定の長さに切り揃えられたナラの丸太は、クレーンで掴みやすく、荷台の限られたスペースに隙間なくパズルのように収まっていきます。もし長さがバラバラであれば、積載効率は著しく低下し、運搬コストも増大してしまいます。私たちのマナーとしてのこだわりが、そのまま「物流の効率」へと直結する瞬間です。
積み込み作業中、私たちが最も神経を尖らせたのは「国道の安全」と「現場の美化」です。大型車両の出入りは、国道16号の交通流に少なからず影響を与えます。ガードマンと緊密に連携し、車の流れが途切れる一瞬を突いて誘導を行い、周囲の安全を完璧に確保しました。
さらに、今日のこだわりである「道路を汚さない」というマナーも徹底しています。雨上がりの泥をたっぷり含んだ根株や材を持ち上げる際、泥が国道側へ飛散しないよう、クレーンの旋回軌道を慎重にコントロールします。もし泥が落ちれば、即座にスタッフが清掃に回り、国道を利用する方々への迷惑を最小限に抑える布陣を敷きました。
次々と積み込まれるナラの巨躯。荷台が巨材で埋め尽くされ、大型車がゆっくりと現場を後にするたび、瑞穂町の現場には新たな「空間」と「光」が生まれていきます。それは、7日間にわたり私たちがこの場所で戦い抜いてきた成果が、目に見える形となって旅立っていく、誇らしい時間でもありました。


⑤ユンボで伐倒作業中:鉄のアームが導く、巨木攻略の「最適解」
大型搬出によって足元の材が整理されたことで、重機の可動域が広がり、伐倒作業はさらに加速していきます。ここからの主役は、再びコンマ0.25ユンボです。樹高15〜20メートルに達するナラの巨木を相手にする際、人力のチェーンソーのみで挑むのはリスクが伴います。特に今回のような国道沿いの限られた空間では、ユンボのアームによる「物理的なコントロール」が生命線となります。
オペレーターは、ユンボのアームを天高く伸ばし、バケットの先端をナラの幹の絶妙な位置に添えます。これは無理やり押し倒すための力技ではありません。木が本来持っている「倒れようとする力」と、風や枝の偏りによる「予期せぬ挙動」を、鉄のアームで優しく、しかし強固に制御するためです。
地上では、職人がユンボの動きを注視しながら、幹の根元にチェーンソーの刃を入れます。正確な「受け口」を作り、木の進むべき道を決定づける。このとき、ユンボが頭上を支えているという安心感があるからこそ、職人は一ミリの狂いもない精密なカットに集中できるのです。
「よし、アームで少しテンションかけてくれ!追い口入れるぞ!」
スタッフ間の鋭い連携とともに、追い口が入れられます。ユンボがゆっくりと、しかし確実に重圧をかけると、ナラの巨躯はみしみしと悲鳴を上げ、狙い通りの安全な方角へと地響きを立てて横たわります。この瞬間、重機と人間が一体となって一つの生命力を御したという、プロフェッショナルならではの静かな高揚感が現場を包みます。
雨上がりの泥濘(ぬかるみ)という不安定な足場環境においても、ユンボのキャタピラは大地をしっかりと掴み、揺るぎない安定感を提供してくれます。一本、また一本と、瑞穂町の空を塞いでいたナラの壁が、重機の力強い咆哮とともに大地へと伏していきました。

⑥玉切り作業中:静かなる断裁と、職人が見極める木の「重心」
伐倒作業の熱気が冷めやらぬ現場で、次に行われるのが、横たわった巨木を一定の長さに切り揃える玉切り作業です。一見、倒れた木を刻むだけの単調な作業に見えるかもしれませんが、ここには職人の極限の集中力と、木に対する深い洞察が求められます。
作業員はチェーンソーを構え、横たわったナラの幹に対して垂直に刃を当てていきます。この時、最も神経を使うのが、材の中に蓄積された「テンション(荷重)」の逃がし方です。樹高20メートルクラスの巨木ともなると、自重だけで数百キロに達します。地面のわずかな起伏や枝の接地状況によって、幹の内部には目に見えない強大な力がかかっており、不用意に切り進めれば、切り離した瞬間に材が跳ね、作業員の身体を直撃する危険があります。
スタッフは、材のしなり具合や地面との接地面を鋭く観察し、上から、あるいは下からと、刃を入れる向きを的確に変えていきます。雨上がりの泥濘(ぬかるみ)で足元が不安定な中、一太刀ごとに「木がどう動くか」を予測しながら進める作業は、まさに大地を相手にした真剣勝負です。
また、私たちのこだわりである「幹の長さを揃える」というマナーは、この玉切り作業において徹底されます。美しく切り揃えられた断面は、後続の集積作業での積み上げを安定させ、さらには大型車両へ積み込む際の積載効率を劇的に向上させます。
チェーンソーが材を切り裂くたびに、瑞穂町の湿った空気に、力強くも瑞々しいナラの木の香りが立ち上ります。4人のスタッフが阿吽の呼吸で連携し、無秩序に横たわっていた巨木たちが、規律正しく切り揃えられた「丸太」へと姿を変えていく。そのプロセスは、荒々しい伐採現場に「秩序」と「機能美」を与えていく、誇り高き職人の仕事そのものでした。

⑦幹集積中:限られた空間を活かす「整理」の技術と、次なる工程への布陣
大型搬出が続く中、現場では次々と新しい材が生み出されています。この限られた作業スペースを死守し、かつ効率的な搬出を継続するために不可欠なのが、この「幹の集積」作業です。
現場の一角には、すでに山のような枝葉と、一定の長さに切り揃えられたナラの幹が積み上げられています。しかし、これは単に「置いている」のではありません。搬出用の大型車両がどこに停まり、どの角度からクレーンを伸ばすのが最も効率的かを計算し、緻密な配置のもとに集積されています。
コンマ0.25ユンボが、泥にまみれた巨大な丸太をフォークで器用に掴み、集積場へと運びます。ここで重要なのが、材の種類やサイズごとに仕分けを行うことです。
搬出のメインとなる「太い幹(丸太)」
嵩張るが燃料などにもなる「枝葉の山」
地中から抉り出したばかりの「巨大な根株」
これらを混ざらないように整然と積み上げていくことで、現場には「作業用通路」が確保され、3名のスタッフがそれぞれの役割に没頭できる安全な環境が維持されます。
また、集積作業中も「国道を汚さない」というマナーは徹底されています。ユンボで材を運ぶ際、タイヤや履帯(キャタピラ)に付着した泥が国道側へこぼれ落ちないよう、移動ルートは常に現場内側に限定。もし小さな泥の塊がフェンスを越えて歩道に落ちれば、即座に地上のスタッフが駆けつけ、箒とチリトリで清掃を行います。
雨上がりの湿った空気の中、高く積み上げられたナラの山は、これまでの7日間で私たちがこの大地から受け取ったエネルギーの総量を物語っています。整然と並んだ幹の切り口が、物流倉庫の白い壁面を背景に並ぶ光景は、荒々しい伐採作業の中に職人の「規律」が息づいていることを証明していました。

⑧お昼休憩:切り株に腰掛け、泥濘の上の静寂を分け合う
12時の時報とともに、現場を支配していたチェーンソーの咆哮とユンボの重低音が止まりました。国道16号を走る車の走行音だけが、少し離れた場所で日常の鼓動を刻んでいます。午前中の雨は上がり、空はどんよりとした曇天へと変わりましたが、スタッフ3人の顔には、難所を乗り越えた者だけが持つ、静かな充実感が漂っていました。
今日のランチタイムも、伐採現場ならではの「現場主義」なスタイルです。自分たちが先ほどまで向き合っていたナラの丸太や、積み上げられた枝葉の山を椅子代わりに腰を下ろします。足元は雨上がりの泥で不安定ですが、それすらもこの過酷な現場を共にした証のように感じられます。
スタッフたちは、各自で用意したお弁当を手に取ります。お昼ごはんの内容については、日々のルーティンとして定着しているエネルギー重視のラインナップ。温かい飲み物が、冷えた指先と身体の芯まで染み渡っていきます。
食事を囲みながら交わされるのは、午前中の作業の振り返りと、午後の「抜根」や「集積」に向けた綿密な打ち合わせです。
「玉切り中に木が転がってきた時は焦ったな。午後は斜面の角度をより慎重に見よう」
「道路側の清掃、今のうちに一度済ませておこう。泥を引きずらないのが今日の鉄則だ」
そんな会話を楽しみながら、束の間の休息を謳歌します。背後には巨大な物流倉庫、目の前には自分たちが切り拓いた広大な大地。ふと見れば、切り出したばかりのナラの年輪が、数十年という時の重みを物語っています。自分たちの仕事が、確実にこの街の風景を更新していることを肌で感じながら過ごすこの時間は、単なる食事以上の意味を持ち、チームの結束をより強固なものへと再構築してくれます。
13時。お弁当の容器を丁寧にまとめ、立ち上がる職人たちの目には、午後の激闘を勝ち抜くための鋭い光が再び宿っていました。瑞穂町の空をさらに広げ、完璧な整地を目指す後半戦が、今静かに始まろうとしています。

⑨玉切り作業中:経験を糧にする精密断裁と、泥濘の中の足場確保
13時。現場に再びチェーンソーの鋭い咆哮が響き渡ります。午後の作業の幕開けは、山積みにされたナラの巨材たちを、搬出に最適なサイズへと細分化していく「玉切り」の継続です。
午前中、切り離した材が自分の方へ転がってくるという危うい場面を経験したスタッフたちは、午後の作業ではアプローチの方法を抜本的に見直しました。まず、材が横たわっている地面の傾斜を細かく確認し、転がりの予測を徹底します。さらに、少しでも不安定さが懸念される巨材については、無理に人力だけで処理しようとせず、ユンボのアームで材の端を優しく、かつ強固に押さえた状態で刃を入れる手法を徹底しました。
雨上がりの泥濘(ぬかるみ)は、午前中よりもさらに粘り気を増し、職人の踏ん張りを奪おうとします。
「足元、泥で滑るぞ!無理な姿勢で切るなよ」
「了解。一度ユンボで材を安定させてから入る」
そんな声掛けが頻繁に行われます。チェーンソーを操る職人は、材の中に潜む「荷重(テンション)」の逃げ場を慎重に見極め、刃が挟み込まれないよう、上から下へ、あるいは下から上へと、ミリ単位で角度を変えながら切り進めます。私たちのこだわりである「幹の長さを揃える」というマナーを完遂するためには、この不安定な足場であっても、正確な目測と安定した刃運びが求められます。
一本の巨木が、規則正しい長さの丸太へと姿を変えていくたびに、現場には清々しいナラの香りが広がります。泥にまみれ、汗を流しながらも、職人の手によって生み出される整然とした「材」の山。それは、午前中の失敗を即座に改善し、安全と品質を両立させようとする職人たちの意地の証明でもありました。
瑞穂町の空の下、鈍色の雲を吹き飛ばすような熱気で、午後の重要工程が着実に進められていきます。

⑩ユンボで伐倒作業中:鉄腕が描く放物線と、国道沿いの極限コントロール
午後からの伐倒作業は、さらにその精度を一段階引き上げることとなりました。今回、私たちが対峙しているのは樹高15〜20メートル級のナラ。この巨体を、わずか数メートルの幅しかない国道沿いの法面やフェンス際で倒すには、重機と人間の完璧なシンクロが求められます。
コンマ0.25ユンボのオペレーターは、長いアームをゆっくりと、しかし正確にナラの幹へと伸ばしていきます。バケットの爪を幹の高い位置に添え、木が最も安定して倒れる「支点」を確保します。これは単に力で押し倒すためのものではありません。雨上がりの不安定な天候下、いつ突風が吹いても、あるいは枝の重心がどちらに偏っていようとも、狙い通りの位置に木を誘導するための「鉄の意志」による制御です。
地上では、職人がユンボの動きと連動しながら、幹の根元にチェーンソーの刃を入れます。
「よし、右側にテンションかけてくれ!受け口決めるぞ!」
スタッフ間の鋭い連携が現場に響きます。チェーンソーがナラの強固な繊維を断ち切る鋭い音と、ユンボの油圧が唸る重低音が交錯します。追い口が深く入り、ユンボのアームがゆっくりと圧力を加えると、20メートルの巨躯は逃げ場を失ったかのように、計算された放物線を描いて大地へと吸い込まれていきました。
国道側では、フェンス越しに大型トラックが走り抜けていきます。この至近距離での伐倒を可能にしているのは、ユンボによる完璧な保持があるからこそ。もしユンボによる支えがなければ、木が倒れる瞬間に跳ねたり、フェンス側に滑り落ちたりするリスクを排除しきれません。重機のパワーを、破壊ではなく「安全」のために使い切る。それこそが、瑞穂町の現場で私たちが貫いているプロの流儀です。
一本、また一本と、瑞穂町の空を塞いでいたナラの壁が、重機の力強い咆哮とともに大地へと伏していきました。かつては影を作っていた巨木たちが去った跡には、冬の終わりの柔らかな光が泥濘(ぬかるみ)の地面を照らし始めていました。

⑪根っこ集積中:大地の深淵から引き抜く「生命の記憶」
伐倒作業が一段落した跡地には、巨大なナラの「根株」が静かにその存在を主張しています。樹高20メートルに及ぶ巨躯を支えてきた根は、瑞穂町の地中深くまで複雑に張り巡らされており、これを一つずつ抉り出す作業は、本プロジェクトにおいて最も忍耐とパワーを要する工程の一つです。
コンマ0.25ユンボが唸りを上げ、地中に鋭いバケットを突き立てます。根を切り離すために周囲の土を掘り起こすと、昨日からの雨を吸った重い泥が跳ね上がり、現場は一段と過酷な色を帯びていきます。オペレーターは、ユンボのアームを通じて伝わってくる「根の抵抗」を感じ取りながら、少しずつ土を剥がし、最後はフォークで力強く引き抜きます。
「この根っこ、思っていた以上に深いな。慎重に持ち上げろ!」
地上に引き揚げられた根株は、泥をたっぷりと含み、まるで異形の巨大な生命体のような凄みを感じさせます。これをそのままにしておけば、現場の作業効率は著しく低下します。私たちは即座にユンボを操り、抉り出したばかりの根株を、搬出に最適な集積場へと運び込みました。
ここでのこだわりは、根っこ、幹、そして枝葉を完璧に「仕分け」して積み上げることです。特に根株は嵩張り、泥も付着しているため、他の材と混ざると搬出時の重量計算や処分効率に影響を与えます。集積場には、これまでの激闘を物語る巨大な根株が山のように築かれ、その隙間を埋めるようにして泥土が堆積していきます。
抉り出された跡の大きな穴は、即座にユンボで埋め戻し、平坦に慣らしていきます。この「地中の戦い」を経て初めて、瑞穂町の大地は次なる利用のための「白紙の状態」へと戻るのです。降りしきる雨が上がったばかりの現場で、泥にまみれた根の山を見上げ、私たちは自然の生命力の強さと、それを一つずつ整えていく職人仕事の重みを、改めて噛みしめていました。

⑫ラストユンボ伐倒作業中:黄昏の空に響く、最後の一太刀
15時を過ぎ、瑞穂町の空からは厚い雲が少しずつ流れ、時折、冬の終わりの柔らかな光が現場を照らし始めました。朝から降り続いていた雨は完全に上がり、泥濘(ぬかるみ)となった大地も、私たちの激闘の証として黒々と光っています。
いよいよ、本日の伐倒予定25本の最後を飾る一本。樹高18メートルを超えるナラの巨木が、国道16号のフェンス際に静かに、しかし威風堂々と立ちはだかっています。これまでの24本で培ったチームの連携を、この一本にすべて注ぎ込みます。
最後の一本も、私たちの信頼するパートナーであるコンマ0.25ユンボが主導権を握ります。オペレーターは、泥に足を取られがちな斜面でユンボのバランスを完璧に保ちながら、長いアームをゆっくりとナラの幹へと伸ばします。バケットの爪が、ナラの高い位置を優しく、かつ力強くホールドした瞬間、現場には心地よい緊張感が走りました。
地上では、職人が最後の一本に敬意を払うように、チェーンソーの刃を根元に当てます。
「よし、アームでしっかり支えてくれ。受け口、作るぞ!」
スタッフ3名の視線が、一点に集中します。国道を走る車の喧騒が遠くに聞こえる中、チェーンソーの鋭いエンジン音が最後の大立ち回りを告げるように響き渡りました。正確に刻まれた受け口、そして慎重に入れられる追い口。ユンボのアームが、木が本来持ちたがる「迷い」を封じ込め、安全な放物線へと導きます。
「……倒れるぞ!」
みしみしとナラの巨躯が断末魔のような声を上げ、ゆっくりと、しかし確実に予定された安全地帯へと吸い込まれていきました。ズシンという、大地を揺らす重厚な衝撃音。それが、本日の「25本伐倒完遂」を告げる勝利のファンファーレとなりました。
倒れ伏したナラの幹の向こうに、これまで枝葉で遮られていた物流倉庫の全景と、広大な瑞穂町の空が広がりました。最後の一本を仕留めた瞬間、スタッフの間には言葉を超えた達成感が広がり、泥にまみれた顔には自然と笑みがこぼれました。しかし、職人の一日はまだ終わりません。この後には、この巨木を資源へと変える集積と、大型搬出の最終便が待っています。

⑬大型搬出作業中(幹):整然と並ぶ「材」が語る、職人の規律と搬出の美学
午後、再び現場に大型ヒアブ車が滑り込んできました。今回の積み込み対象は、午前中から午後にかけ、私たちが心血を注いで玉切りし、集積してきたナラの「幹(丸太)」です。枝葉や根っことは異なり、ずっしりと重量感のある幹が荷台を埋め尽くしていく様子は、まさに伐採プロジェクトにおける収穫の瞬間とも言えます。
大型車のクレーンが、現場の一角に高く積み上げられた幹の山へと正確にアームを伸ばします。グラップルが一度に数本の丸太を力強く掴み上げると、空中にナラの重厚なシルエットが浮かび上がります。
ここで改めて際立ったのが、私たちの徹底した「幹の長さを揃える」というこだわりです。荷台の中を見渡せば、切り口の揃った丸太たちが、まるで測ったかのように美しく、隙間なく整列しています。もし長さが不揃いであれば、積み込みのたびに「パズル」のような微調整が必要になり、作業時間は大幅に延びていたでしょう。
「長さが揃っていると、掴むのも積むのも本当にスムーズだ」
オペレーターとの無言の対話が、クレーンの流れるような動きに現れています。雨が上がり、時折差し込む太陽の光が、瑞々しい丸太の切り口を照らし出します。背景にそびえる物流倉庫の近代的な外観と、古くからこの地を支えてきたナラの巨材。その対比が、時代のバトンタッチを感じさせる象徴的な情景を作り出していました。
また、大型搬出の最終便においても、「国道を汚さない」というマナーは最優先事項です。クレーンの旋回時に泥が国道側へこぼれないよう、アームの動きは常に現場の内側を通り、積載が終わるごとに路面のチェックを欠かしません。
40立米を超える圧倒的な物量を誇った今回の搬出。荷台がナラの幹で隙間なく満たされ、大型車が力強い排気音とともに国道16号へと合流していく後姿を見送りながら、私たちは自分たちがこの7日間で成し遂げた仕事の大きさを、その重量感とともに噛み締めていました。


⑭抜根作業中:大地の深淵に挑む「地下の戦い」と、完璧な整地への執念
伐倒が終わった後の地面には、何十年もの歳月をかけて瑞穂町の大地に根を張ってきたナラの根株が点在しています。これらを一つ残らず抉り出し、大地を「白紙」の状態に戻すことが、この抜根作業の使命です。
コンマ0.25ユンボのオペレーターは、鋭いバケットを地中深く突き立て、根の周囲を慎重に掘り起こしていきます。しかし、樹高20メートルクラスの巨躯を支えてきた根は想像以上に強固で、四方八方に複雑なネットワークを形成しています。
「この根、国道側の歩道の下まで伸びているな。フェンスを傷つけないよう、慎重に浮かせてくれ」
スタッフ同士、泥にまみれながらも一瞬の油断もない連携が続きます。ユンボのフォークで根の太い部分を掴み、大地の抵抗を力技でねじ伏せるようにして引き抜く瞬間、現場には「メキメキ」という大地が裂けるような凄まじい音が響き渡ります。
引き揚げられた根株は、絡みついた大量の泥とともにその全貌を現します。その姿は、これまでこの土地を守り続けてきた生命の力強さを物語るかのようです。抉り出された跡の大きな穴は、即座にユンボで埋め戻され、丁寧に転圧して平坦に慣らしていきます。
この作業においても、私たちのマナーである「道路を汚さない」という鉄則は守り抜かれます。抜いたばかりの泥だらけの根を移動させる際、国道側に土がこぼれないよう、ユンボのアームの旋回角度を常に内側に制限し、万が一土が跳ねた場合は、地上のスタッフが即座に清掃を行います。
地上の木を倒す「伐採」が華やかな仕事なら、この「抜根」は地味で過酷な、しかし最も誠実さが問われる仕事です。一つひとつの根と対話し、大地を本来の姿へと還していく。その地道な作業の積み重ねが、瑞穂町の新しい未来を支える強固な土台となるのです。


⑮作業後:夕陽に照らされた新たな大地と、国道16号に刻んだ矜持
17時。現場に鳴り響いていたチェーンソーの残響とユンボの重低音が、静かに止まりました。国道16号を走る車の走行音だけが、日常の鼓動として周囲に満ちています。7日間にわたり、精鋭たちが心血を注いできた瑞穂町の現場は、今、劇的な変貌を遂げた姿を現しています。
現場全体を見渡すと、作業開始前の鬱蒼とした「木の壁」はどこにもありません。物流倉庫の巨大な壁面を背景に、突き抜けるような広い空と、美しく整えられた大地が広がっています。本日のミッションであったナラ25本の伐倒と10本の抜根、そして大規模な搬出。これらすべての成果が、目の前の清々しい景色として結実しています。
「本当に、空が広くなったな……」
泥にまみれたスタッフたちが、夕刻の光の中で現場を振り返ります。本日の作業は決して平坦な道のりではありませんでした。雨上がりの泥濘に足を取られ、玉切り中には丸太が転がってヒヤリとする場面もありました。しかし、そうした困難を一つひとつ乗り越え、無事故でこの瞬間を迎えられたのは、チームの盤石な連携があったからこそです。
特にこだわった「道路を汚さない」というマナー。作業後のアスファルトを確認すると、頻繁に大型車両が出入りしたとは思えないほど清潔に保たれています。泥一つ残さないという職人の誇りが、地域社会との信頼を守り抜いた証です。
現場の一角には、後日の搬出を待つ最後の材が整然と積み上げられています。かつてこの場所で何十年も時を刻んできたナラたちは、私たちの手によって資源へと姿を変え、新しい役割へと旅立つ準備を整えました。抜根された跡地は、ユンボによって丁寧に転圧され、瑞穂町の未来を支える平坦なキャンバスへと生まれ変わっています。
相棒の軽バンに、7日間使い込んだ機材を積み込みます。泥を落とし、メンテナンスされたチェーンソーの刃が、夕陽を浴びて静かに光っています。私たちは、この街の風景を更新したという確かな手応えと、一人の怪我人も出さずに完遂した安堵感を胸に、住み慣れた街へとハンドルを切りました。

記入者:株式会社 樹
現場: 東京都西多摩郡瑞穂町高根(国道16号沿い)
人員: 3名
完了日: 2026年2月26日(木曜日)
成果: ナラ25本伐倒、10本抜根、大型搬出、整地完了



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